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第55話 番外編 5年後の僕たち
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「お巡りさんおはよーございます!」
「おはようございます。縁石歩いちゃダメだよ危ないよからねー」
「はーい」
朝の通勤通学時間。僕は交番の前を行き交う住民の皆様に挨拶をする。
そろそろだ。いつもだいたいこの時間にこの道を通るはず・・・
「あ! おはようございます!」
「おはようござ・・・えっ!? 奏汰!?」
スーツ姿の蓮くんが僕に気付いて驚く。
「へへ、今年から僕、この交番で勤務することになったんだよ。驚かせたくて。大成功♡」
「マジびっくりした。・・・つか制服、初めてまともに見たかも。カッコイイじゃん」
「へっ、えっ、そう!? 似合ってる!?」
「うん。似合ってるよ。お前にだったら逮捕されたいかも」
ふ、と笑顔になる蓮くんにズキュンと胸を撃ち抜かれる。
褒められるなんてレア過ぎる上に、それがスーツで髪をセットした蓮くんにだなんて。朝イチで今日の運を全部使ってしまった気分。
「じゃな、行ってきます。お前も気をつけてな」
「えっ、うん。行ってらっしゃい」
呆気なく去っていく彼の後ろ姿。
出勤するんだから当然なんだけど、その前に僕も勤務中なんだけど、もう少し一緒にいたかったなぁ。
でもいいや。
ここは実家から通える範囲だし、何も無ければ向こう2年これから毎日のように蓮くんに会えるんだし・・・
「え!? 一人暮らし!?」
「あー、うん。もう契約は済ませてあんだよ。あとは引越しだけ」
「なんで!?」
「なんでって、社会人になってずっと家にいるのもなんかな。両親もそろそろ家帰ってくるつもりみたいし」
「そんなあ、僕がせっかく家から通えるとこに異動になったのに! 酷いよ蓮くん!」
「しょうがねぇだろ。もっと早くお前から聞いてりゃ先送りにしたかもだけど」
ぐぬぬ。蓮くんを驚かせたいだけの為に内緒にしていた馬鹿な自分を呪ってやりたい。
「それよりさぁ、制服って、勤務時間外は着れねーの?」
「そうだね」
「そーなんだ。残念」
「なんで?」
「えっ!? イヤ、その、・・・うん、・・・なんかカッコよかったなって・・・」
口篭る彼を見て、僕の『蓮くん感情レーダー』が発動する。
「コスプレしてヤリたかった?」
「は、そそそんなわけっ」
慌てて吃音を漏らす。
実際勤務中は着用してるんだからコスプレでもないんだけど。
・・・そうだ!
「ちょっと待ってて!」
僕は急いで向かいの実家へ一旦帰る。
5分後
「じゃーん、コスプレならこれじゃダメ?」
「・・・・・・・・・」
得意げに両手を広げる僕に向けられる蓮くんの視線が冷たい。
「学ランとか見飽きてるし。つか今更そんなん着られても罪悪感しか湧かねんだけど」
「え~! せっかく着てきたのに!」
「警察官の制服が良かった。あっちのが100倍カッコイイ」
わがままなんだからも~。
ベットの上、壁を向いて体育座りで拗ねる蓮くんの肩を掴んで仰向けに押し倒す。
「付き合いたての頃みたいで興奮しない?」
「えっ? まあ、そりゃ少しは・・・」
ほんと流されやすい。
「蓮くん、好き。好き。僕のものになって」
「・・・っ」
一気に顔を真っ赤にして困り顔の彼に、僕のほうが戸惑ってしまう。
「ど、どうしたの、急に」
「、や、お前最近、そんなのあんまり言わなかったじゃん。だから、なんかすっげ恥ずかしくてっ」
顔を隠す蓮くんの両手をベッドに縫い付けキスをするけど、僕と目を合わせないように顔を背ける素振りをする。
「・・・蓮くんてさ、僕のことめちゃくちゃ大好きだよね」
「ぅ・・・、言ってろ、お花畑野郎・・・」
花なんて咲かせまるに決まってるでしょ。だって愛しい愛しい蓮くんが『大好き』って思ってくれてるんだから。
服の上から胸を撫でて爪先で突起を細かく引っ掻くと、蓮くんは腰を浮かせて震わせる。
トップスを捲り上げるとぷっくりと膨らんだそこは可愛くてヤラシくて。巨乳好きだったはずの僕は、今ではすっかりこの両乳首に夢中です。
「どんなふうに抱いてほしい? コスプレでガッカリさせちゃったから、わがまま言っていいよ」
「・・・奏汰がいっぱい触ってくれんなら、なんでもいい」
蕩ける寸前の表情が僕を煽る。
堪らなくなって、僕は細い首筋に噛み付いて吸い付いて痕を残す。
少しの距離なんて僕達にとっては何の障害にもならない。
いつかお互いジジイになって一緒に縁側でお茶を啜るまで、僕たちはきっと離れることは無い、と思う。
きっと蓮くんもずっと同じ気持ちだと、確信できるから。
でも少しでも近くにいたかったけどね・・・涙
happy(?) END
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