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15 所沢まやは、オレの最大の――
タラリ…と、せっかくさっぱりシャワーを浴びたばかりの額に冷や汗が伝う。
そんなオレの悪い知らせのような予感は
「ええっ!!? ほっ本当なの渡利くん!! なんとっずっとずっと売り切れだったまやりん☆の限定アクキーを手に入れただなんて…!!! はいっ、はい了解しました!! 今すぐそっちに向かうよっ、ありがとう渡利くん心の友よっ!!!」
………あああああっほらもうっやっぱり当たったあぁぁぁっ!!!!
窓の外の電線でゆったりほんのり暖かな日差しを浴びている鳥たちが、驚きで飛び去っていきそうなほどの大声を出しながら、何故か90度の綺麗なお辞儀をしつつ電話をピッと勢いよく切ったすぐるの後ろ姿にオレが「……おい」と声をかけようとした、と同時。
「ごめんね真哉くんっ!! 僕これからちょっと渡利くんのお家に行ってくるよ♡♡♡」
「――」
くるりとこちらに身体向け見せたすぐるの笑顔は、それはもう一切の曇りのない太陽のように眩しい満面の笑みであり。
ピシリ、
机の前、座ったままの状態でオレは身体を硬直させる。
そんなオレにはまったく気づかず、
「ああっ急がなくちゃ…あったまごサンドったまごサンド!! んっやっぱり美味しい♡」と、バタバタ服を着替え髪を整え…合間にきっちりオレのたまごサンドを美味しそうに食べ…歯磨きをしてバッグに何やら色々詰めたのち。
「それじゃあ真哉くん、僕出かけてくるね。もし身体まだ疲れてるようだったら食器は洗わないで大丈夫だから、このまま僕の部屋でゆっくりしてもらってもいいからね。あっあと、今日のお夕飯は君の好きなビーフシチューにしようと思うから、楽しみに待ってて♡」
玄関入り口、戦闘態勢万全とでも言うようにキリリッといつも下がっている眉を吊り上げながら、けれどもオレを労わる言葉はしっかりとかけてくるので――…
「っ、ああもうくそっ!!」
「へっ…!?」
バァンッ!! 机を強く叩き、その反動かの如く素早く立ち上がったオレは、次には玄関前、ポカン…と顔を呆けさせているすぐるの傍まで足早に向かい。
「まっ真哉くん、いきなりどうしっ…」
ちゅっ♡
「……え、」
「…っ、い、行ってらっしゃいのちゅう…だ。夫婦っぽい、だろ…」
「っ!! …ま、真哉くんっ…♡ うん、すごく夫婦っぽいね♡」
「せっかく今日は二人ともバイトがない休みの日なんだ……まやりん☆のグッズ貰ってきたら、すぐにオレの所に帰って来ないと許さないんだから…な、」
「――…うん、了解ですっ真哉くん♡♡」
「…なら、良し…♡♡」
だからオレは、いってらっしゃいのキスと共に、オレの最大の恋のライバルであるオレと同じ名前の持ち主、所沢まや――『まやりん☆』の元へと、愛しの恋人を送り出すことにしたのだった。
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