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最初の雄っぱいは失敗から
「本日ぅ〜我が修道高校柔道部が優勝を収めました〜! カンパァーイッ!」
『かんぱーい!』
チン、チンとあちこちからグラスがぶつかる音が鳴り響いて、テーブル三つを連結させた居酒屋の個室がワッと盛り上がった。
カンパイと言っても高校生なので皆ウーロン茶やらメロンソーダを持っているが、アルコールなんかなくても俺たちが酔うには十分だ。
修道高校の柔道部は、本日地区大会で優勝を果たした。
そこそこの中堅とされながらも、永らく隣の強豪校に競り負け、団体戦では日の目を見ることがなかった。
それが数年ぶりに全国大会出場を決めたのだから、当然みんな沸き立っている。
「秋峰さん、さすがでした! 個人でも全国出場おめでとうございます!」
勝利に酔っている副将が主将の肩を組んで、赤ら顔で笑った。
それに対して、水を飲んでいる主将――秋峰恋介 さんは、
柔道部にしてはやや長い髪を照れくさそうに掻き混ぜて、苦笑した。
「いやいや、個人の方は頑張ったけどね。団体での全国進出は皆の力を合わせた結果だよ」
「そんな謙遜っすよ〜」
男らしいが甘い顔立ちに柔和な笑みを浮かべて、部員たち全員を見渡す。
秋峰さんはコップをごとりと置いて、穏やかな声で言った。
「皆、今日までよく頑張った。そして、これからはより全力で日々の練習に取り組んでいこう。夏の全国大会に向けて」
部員の士気がうなぎ登りになるのを肌で感じる。
秋峰主将。
彼は、俺が尊敬してやまない憧れの人である。
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