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第10話
何も良くない。もしかして俺まだちょっと酔ってるのかもしんない。
きょとん顔の秋峰さんに青ざめつつ、そりゃそうだと納得しつつ、前のめりの姿勢のまま固まる。
無意識に握り拳まで作っていた。
同じく固まっていた秋峰さんは、数秒後言われた内容を処理し終えたらしく、ぷっと吹き出した。
「おま……っどれだけ胸フェチなんだよ」
「すんませ……! なんか違うっす……! 言いたかったこととなんか違」
「まあいいけどよ。気ィ抜けたわ」
とんでもないことを抜かしてしまったと気付いて、平謝りすると、ぶんぶん振り下げていた額にデコピンを喰らった。
「痛っ!」
「それ、俺とお前の間じゃなかったらセクハラやべぇからな。気を付けろよ」
「ハイッ、金輪際ないように専念します!!」
「はいはい。近所迷惑だからあんまり騒ぐな。じゃあ今度こそまたな」
ヒラヒラと手を振って立ち去っていく秋峰さんを、俺はいつまでも見送っていたのだった……。
〈第一章〉
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