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第15話――黒田――

 華奢な腰を掴んで準備万端になった田淵の孔は、素質ありのひくつきを見せる。  「ソファなんかで悪いけど、挿れるよ」とソファの手すりに手をつかせ、田淵を覆う。    興奮を体現すると、息が荒くなるらしい。辛いのか快楽に悶えているのか、田淵から漏れる声に背中を凝視する。華奢な腰を掴み、自身の一物を努めてゆっくりと、挿入していく。  ソファに掴まって快感の逃げ道を作るように力を込められる。それでいて、抜けた声で悶える田淵。  後ろからの方が、受ける側として楽なのだろう、ネットの知識だったが的を得ていたようだ。    それに田淵の体は軟体で、快感に酔い折った腰が美しい。打ち付ける自身の腰も自然と速くなる。  生理的な涙を流し、嬌声を上げて、そして「好きだ」という田淵。 「黒、田君……」  聞き逃しそうなか細い声だった。だが、聞き逃す程、彼を蔑ろにして欲に浸りたい訳ではない。  返事をして、黒田は田淵の固く込められた手を同じ手で覆い重ねた。 「えと……前、からしてもらってもいい、かな」 (ここで素直になっちゃうんだ。——でも)  覆う黒田の指は田淵の指と絡まり、入り込み、逃さない。田淵がそれに気づいて力を緩めたとしても。 (まだ、堕ちてこなきゃ駄目だ。ヒロキさんは俺がいて、生きていけるんだよ) 「うん、そっちの方がいいね。ヒロキさん、顔を見せて」  「黒田君」という田淵の声を聞きながら、彼の片足だけを回し腰をゆっくりと回転させる。    普段は困惑の八の字眉が、今日は快感に耽溺する八の字眉だ。 「っうわぁっ」 「ごめん、ヒロキさんの足を開いてるから、まだ入るんだ」  正常位になったところで、黒田の最奥を田淵に挿した。  「少しアヘ顔だぁ、可愛い」間髪入れずにピストンを速くする。  そこからはもう、止まらなかった。欲が尽きるまで田淵を付き合わせた。黒田の予想通り、田淵は一回きりで終わると踏んでいたらしく、複数回も挑めば怯んでいた。  それ以降は、戦意喪失したように揺らされるだけだったが、田淵はきっと覚えていないだろうからオフレコだ。  黒田の理性が再度形成された頃、田淵の自室であるベッドでカーテンの隙間から暁光差し込んでいた。田淵の身体はキスマークと甘噛みした歯形ばかりで、まさに満身創痍である。  「歯形の方が多いって……俺、まだまだ若いのかもなぁ」と自重気味にひとりごちて、首筋にこそたくさんある歯形のひとつをなぞる。 「あ、そういえば、途中からゴム使ってないんだった。掻き出さないと」  毛布を捲り田淵の裸体を黒田の視界に晒す。指を入れずとも、既に垂れている精液が潤滑剤となる。エクスタシー満載の光景だ。  しかし、これ以上は強姦とみなされる。精液を腸内に溜めた状態にしておくと、腹痛を引き起こすを聞いたことがあるので、心頭滅却して任務を遂行する。 「俺たち、晴れて恋人同士だね」  田淵の綺麗になった裸体を抱きしめ、再度布団に潜り込んだ。どうせ暫く彼は起きない。否、起きれないので、首筋に大きなキスマークを付けておいた。赤黒くなったが、外へ出ることのない田淵に迷惑をかけることはない。甘美な色味の鬱血痕だ。  そして、黒田は微笑んでいう。「今日のヤツ、しっかり撮れてるといいな。最近は静止画じゃなくて動画にしてみたよ。そろそろヤると思って事前に準備しといて正解だった」。 「ヒロキさん、俺も大好きだから。本当に大好き」  「きっと、あの頃からずっと」と起きる可能性の低い田淵の耳元で囁いた黒田は、程なくして瞼を下げていった。

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