67 / 104

第66話

 ディアゴに連れられたのは、小汚い大衆居酒屋だった。手入れされていない大筒に、裸で割り箸が突き刺さっているだけの、衛生面に多少欠けた感じが、彼に親しみを感じさせているのだという。 「大将、この人俺の友達でね! だから、今日はたくさんおまけしてね!!」 「おお、そうかそうか!! 友達ができたんか! 良かったな!」  カウンターに座り、油汚れが黒い丸見えの厨房から、薄着一枚の大将と呼ばれる肥満体型の中年男が顔を見せる。 「じゃあ、たくさん奢ってやんねぇとな!!」 「おまけしてよ?!」 「ははは!! 随分と真逆なタイプの友達連れてきたなー」 「大将?! 都合の悪いとこ無視しないで!!」  掛け合いを見る限り、随分と通っているらしい。  それを隣で見ていて、ほっこりと胸が温かくなるのを感じながら見ていた。    「デーの友達は何をしてる人だい?」不意に話を振る大将は、気さくで自然と次の言葉が出る。 (デー・・・・・・) 「僕はPCの講師やってます。ディアゴはその生徒さんで――」 「ほー!! こりゃ良縁じゃないか!!」 「良縁?」 「デーはな、日本語を喋れるタイプのハーフなのによ、ここいらの治安が悪いせいで、友達はおろか、人に騙されてばっかりだったんだよ」 「ちょ、大将!」 「んで、一時期文無しになってたところをわしが拾って、出世払いとしてしばらく食わせてたんだよ。コイツ、金金した頭のくせに明るくて、外国の良さが滲み出てるだろう? 美味い時は美味いっていつもいってくれるし、悲しい時は大の大人がわんわん泣いて悲しんでんのさ」  「そんな魅力的な男が日本を失望するようなことはさせちゃならねぇって思えてさ。コイツは今でこそ、大人の余裕っていうのを覚えたらしいが、未だに此処に来ればガキにかえるんだ」腹を揺らして大釜を振るう。 「ガキって・・・・・・俺が日本に来た時も既に成人してたんだけど!」 「外国ってのはたしかに感情豊かでリアクションがいい。だけど、狡猾さも陰湿さもグロバール規模だ。だから、コイツにとっちゃ、日本でされたことなんか範疇なんかもしんねぇ。だけど、友達になったアンタなら、わしと同じこと思ってくれると思うんだが・・・・・・デーは良い奴か?」 「大将?! ここでも無視してくれるの!?」  つい、田淵は笑いを溢してしまった。「はい。ディアゴについさっきまでダンスを教えてもらってました。それも僕が元気ないからって理由で」。 「・・・・・・はいよ、おまちどう。デー、今日はわしの奢りだ。お前ら、腹いっぱい食ってけ」 「大将!!!」 「え、いいんですか? 僕はちゃんと払いますよ」 「いいんだ、甘えとけ。わしは、今すげぇ嬉しくて機嫌がいいんだ。今のうちに沢山頼んどけよ? いつ気が変わるかも分からんからな」  そう言って厨房から差し出されたのは、大釜を振るっていた中身の炒飯。油で艷やかな米の光沢に魅せられて、ディアゴはばちんと合掌し「いただきます!!」の合図で蓮華にもりもりとすくう。  湯気の立ち込めるうちに口内に運び入れ、ダイレクトに熱が舌に伝わったらしい。はふはふ言いながらも、咀嚼を続ける。「っまい!!」。

ともだちにシェアしよう!