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第90話――黒田――

「・・・・・・。何が目的でヒロキさんに近づいた」 「――善意以外何がある。黒田と関係のある人だって分かってたら、慎重になってたさ」 「・・・・・・黒田グループの回し者じゃないのか」 「全然違うけど」    「だけど、ヒロキにちょっかいを出した形で黒田と対峙する感じになっちゃったから、敵対視されてるのには変わりないか」一つ息を溢して肩をすぼめた。 「たしかに、ヒロキと一緒にご飯したよ。でも、それはヒロキがずっと元気なかったからだよ。彼の勤務先の生徒として通ってたのが出会いで、本当に黒田と付き合ってる張本人だなんて知らなかったんだ」 「・・・・・・っ」  「言い訳は聞きたくない」と言うはずだった。しかし、それは喉の奥で詰まって言うことができなかった。 「それが何でかまでは聞かなかったけど」    「はい、お待ち!」険悪な雰囲気を壊すように大将が割って入る。 「ありがとう、大将」 「ありがとうございます」 「・・・・・・今は飯の時間だ。とにかくたんと食え。話はそれからだ」  「飯がまずくなっちまう」差し出されたのはメニューにないオムライスだった。 「大将・・・・・・!」 「ディーが食うのにも困ってた時代によくまかない飯を食わせてたやつさ。みかけはオムライスなんだが、中のチキンライスはその日の残り物を炒めているから毎回味が少しづつ変わるんだよ」    「今日は、たまたま普通のオムライスなんだけど、メニューにはないからこのことは内緒で頼むわ」中年のウィンクが飛んでくる。 「ありがとうございます、いただきます」 「・・・・・・ありがとう大将」 (ディアゴを庇ってるのか)  本来は非売品のオムライスを口に運ぶ。 「――美味い」 「だろ? ディーもこれが好きでな」  「おいおい、どうしたディー」大将がディアゴを覗き込む。 「・・・・・・美味いよ! 黒田も食べて。俺、本当の目的いうからさ」 「――ああ、そうだな」  ディアゴが全てを吐露した件依頼、社長室で作業をしていた黒田と廣田だが、イヤホンから流れる生活音のルーティンが少しづつ変化していき、音も小さく少なくなっている。  これでは黒田の癒やしにならない。だが、音がないのは変に思われた。 (これだけ長時間外出するわけないし・・・・・・)  腕時計を確認すれば丸一日大した生活音がない。トイレに行く、ご飯を食べる、風呂に入る、これらをすれば音くらい立てるものだろう。 「・・・・・・」  「ディアゴは別に見張りが必要な人物ではないようだから、それだけは言っとく。――まぁ、会社には害のないものってだけだけど」と言い残して早退する。 (でも、俺たちがしっかりと言葉にしなかったのが原因だ。――いわずもがな、ヒロキさんが、だけど)

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