1 / 6
第1話
ハヤトside
「お前さ、案外可愛い顔してるよなぁ」
もう何人めかもわからない母の男の言葉
「アイツのドレス、ちょっと着てみてよ」
少しぶかついた母の仕事着に着替えさせられ、
顎を持ち上げながら
「ママには内緒な」と母の真っ赤なルージュを唇に乗せる
恍惚とした男は鼻息を荒くしながら
「なぁ?小遣い、欲しくない?」と
それ以来母の留守を狙っては
「ちょっとさ、お膝座らない?」と抱き抱えて股の辺りを撫でまわしたり
「ぱんつ脱いで下から写真撮らしてよ」と
"お礼"だと言って"おだちん"を多めに握らせてくれたりした。
そこから
「した触らせて」
と言うのはすぐだった。
優しい男だった。
他の男みたくお腹を殴ったりタバコをおしつけたりしないし
少し舐めまわされた後の体が生臭くてベタつくけれど
食べ物やお金をくれる。
俺はこの男が大好きだった。
そんな日がいきなり幕を閉じた。
いつもみたいにちょっと気持ち悪いけど
男のおちんちんを撫で撫でしていたら
いきなり部屋のドアが開いて
知らない大人たちがドタバタと
男を連れ去っていった。
その中の一人の大人が俺の顔を見ると
ポケットに入っていたハンカチで
俺の顔の口紅を拭きながら
「ごめん。ごめん。」と何度も謝っていた。
「おれ、チョコ食べたかったなぁ」
その日のおだちんが貰えなかった俺は
なんだか少し残念だったんだけど
いつもよりいい匂いがする布団で寝られたから
どうでもよくなってしまった。
「いなくなればいい。」
「邪魔」「生なきゃ良かった」
ずっとそんな言葉ばかり浴びていたから、
誰が何と言っても
「ハヤトは可愛いな」という言葉は甘すぎて
「可愛い」くあることは俺にとって
無くてはならない要素になっていった。
ともだちにシェアしよう!