2 / 96
第2話
俺、伊原 優 は行きつけのBARでお気に入りのファジーネーブルを飲んでいた。
甘ったるい桃とオレンジの液体が喉を通るにつれ、楽しい、幸せだ、と感じていた日々を思い出す。そして、最後の別れの言葉も。
一一俺が好きなのはお前なんですけど!!
イライラする思考とともにダンッッとグラスをテーブルに置く。
しまった、と思い顔をあげると俺の他にいた客は1人だけで、俺の対角とも言える場所で静かに飲んでいた男性が驚いたように軽く目を見張って此方をみていた。
バーテンダーはまたか、という表情だったが、ちらりとその客をみたので、俺は男性客に向かってすみません、という気持ちを込めて頭を下げた。
気にしなくていいというように軽く笑ってひらりと手を振ってくれたので俺は安堵し、軽く口角をあげて再び軽く頭を下げると、手の中のグラスに視線を向ける。
ともだちにシェアしよう!