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第1章プロローグ
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「ねえ?今年のバカンスは何処に行く?」
翔平がいきなり俺に話し掛けてきた。
「バカンスですか?そんな事言う前に、コレをどうにかしてください」
そう言って俺は翔平に書類の束を押し付けた。
「じゃないと、バカンスなくなっちゃいますよ?」
気が付くと窓からの日差しが強くなってきたのでブラインドを下げる。窓の外は暑そうだ。
「2人っきりの時にはその敬語やめようよ」
「だめです。2人っきりでも、今は仕事中です。仕事とプライベートは分けないと。そういうのきっちりしましょうってことで、働く事になったんですから。社長?」
そう言うと翔平はブーブー言いながら机の上で新しいスマホアプリのゲームをやり始めた。
「あーこれなー。ここさー。ちょっともたもたしてるよねー」
「ちゃんと書類にも目を通して評価してくださいね」
最近はうちの会社のゲームはこういうスマホアプリ系のゲームに力を入れている。自社でやっているゲームの他にも良いゲームを開発している会社とも連携している。近頃はうちのとあるゲームがとても人気になって、コラボ商品とかメディアミックスものに力もいれていてやたら忙しくなってきた。
まあゆっくりする時間もないので翔平がちょっとイライラしているなあとか思ってはいた。だから、
「こういう細々した仕事、ちゃっちゃとやって今日は久々に早く帰ってゆっくりしましょう」
そう言って見た。
がたがたッという音がしたと思ったら、翔平が椅子から立ち上がって、俺のほうに文字通りすっとんできて、抱き着いてきた。
「雅ちゃーん。やっぱり雅ちゃんは優しい」
「だからっ。雅いうなっていつも言ってるだろっ」
あ、しまった。敬語が崩壊。
「んーそれ、それ。やっぱり雅ちゃんはそういうのがいい」
翔平が俺にもう少しでキスをしそうになったところで内線が鳴った。俺は思わず翔平を押しやって電話をとった。
「はい、社長室ですが?」
翔平に客が来たらしい。その旨を伝えると、
「もうそんな時間か」
翔平は慌てだした。もうそこからは、さっきのちゃらちゃらした感じではなく、社長の顔になっていた。俺はこの社長の顔をした翔平を見るのが好きなんだ。
俺がぼんやり見ていると翔平は、いきなり、チュッという感じで唇にキスをしてきた。
「あ……。翔平・・」
「じゃいくわ」
翔平はウィンクをして出ていった。やられた。いつまで経っても俺はこういう翔平の不意打ち?に乗せられてしまう。まあ、こういう翔平が好きなんだからしょうが無いのかな?
そう、俺、鮎川雅人が翔平に会ったのは、大学時代、ひょんなことからであったんだけど……。あれは大学の2年の麗らかな春先で………スマホなんてなかった頃……。
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