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1年後の春の日

「眠い…」 ホントに春の日差しって眠くなる……。 ああそういえば、去年の丁度こんな日に翔平と出会ったんだっけ? とか思いながら大学の講義が終わっても、窓からの日差しが気持ちよくって椅子でぼんやりしていた。 「雅ちゃん~」 後ろから誰かに声をかけられた。この声は三木だ。 「雅、言うなって言ってるだろが!!三木」 「いーじゃん。今じゃみんな言ってるし」 「お前のせいなんだけど」 たしかに『事情』を知らない他のヤツもあだ名として俺の事を普通に『雅(みやび)』とか言っている。これは三木が俺の事をいつでもそう呼ぶから浸透してしまったようなものだった。 「ふ~ん?でもさあ、玉の輿になったのは"俺のおかげ"だろ?」 「男で玉の輿っていってもちっともよくない」 「そぉ?いいじゃん。色々苦労しなくてさあ」 俺のホントの名前は『鮎川雅人』だけど、それが、丁度1年前。色々あってこいつ、三木のせいで、俺は、有名IT系会社の社長に気に入られて、恋人にされて、しかも、六本木某所で、一緒に暮らしてる事実。 社長は、女じゃない。これが、美人女社長だったらどんなにかよかったか。それもある意味嫌だけど。でも、今の俺よりかまだ、ましだっただろう。 「雅」というのは、その時の「色々」の時に付けられた。 というか、コイツのせいで俺は、ウリ専バイトをさせられるとこだったんだよ。 ・・・という事を、思い出していると。どんどんまた腹が立ってきた。 俺が深いため息をつくと。 すると、三木は俺の耳元でそっと言った。 「ヤリスギ?」 「…何故そうなる・・・オマエさ。その発想オヤジだし」 なんだかんだ言って、三木は、あの時、俺の他にも何人か「Black'nBlue」に入れたみたいだ。侮れないやり手だ。 だけど、なんとなく憎めないのは、その飄々とした人柄なんだろうと思う。 「ほんとの話。お前はいーよな。就職とか考えなくてもいーじゃん」 「何で?」 「木戸さんのとこに永久就職できるし?」 「違うし」 「じゃ?木戸さんの会社に就職?」 「それも違うし」 「えーもったいねー。なんで?」 「……なんでと言われても、そりゃ、翔平の力なんか借りなくて自分でなんとかしたいんだよ」 「ふーん。マジ、もったいねー。俺だったら、とことん利用するのに」 三木ならそうするだろうよ。なんと言っても、『やり手』だしな。 「お、噂をすれば来たよカレシ」 三木が翔平のBMWを見つけて言った。

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