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翔平と三木

「ちょっ、やめろ。声でかい」 ニヤニヤ笑いをしている三木に慌てて言った。 「いいじゃんかってか、みんな知ってるよ?」 ・・え?知ってるって。それってどういうこと?俺が絶句していると、横から、 「どうしました?」 という声が聞こえた。 見ると、大学の講師が立っていた。たしか、この講師はPC技術系の講座の講師だったはず。 「ああ、それがですねえ」 三木が説明をしようとしている。 「おいっ言うなよ。いくらなんでも」 学生同士とかそういうのならまだしも、講師にまで知られるとかいうのは嫌だ。 その講師はのんびりと、 「ああ、BMWですねえ。あの型のは派手な人が乗ってる率が多いんですよね」 とか言ってる。 派手…そうかも。派手っていうか。なんというか……。 「あはは」 と、俺は引きつったカラ笑いをしながら、三木をひきずってその場から離れた。 「三木!いいかげんにしろよ」 「いいじゃん。別に。カレシとか言わなきゃいいんだし」 三木はへろへろしてその場を去ろうとした。 「お前、百回は殴らせろっ」 俺はその三木の後ろ姿に向かって怒鳴った。 と、すると、後ろから。 「雅ちゃん……」 なんか暗い声がした。 「あ……」 後ろを振り返ると、翔平がいた。彼が、某有名IT会社社長で・・俺のカレシという事になっているんだけど。 30代でわりと若く見える。以前テレビで『イケメン独身社長』とか言われてた事もあった。でも、俺には、ただの変態エロオヤジにしか見えない。たしかに、背は高いしスタイルもそれなりにいいし、普通のサラリーマンとは違う雰囲気だ。服装は、今日も相変わらずまともな職業じゃないような服装。コレでは、売れないホストか、うえにヤのつく人みたいだ。 「翔平。いたんだ」 「いたんじゃない。さっきからいたでしょ?知ってたくせに」 ってか、なんだその暗さは。 「じゃ、俺、このへんで」 三木はさっさと逃げて行った。あいつ。調子いいやつ。翔平はそんな三木を見て言った。 「雅ちゃんさあ。淳ちゃんとさあ。仲いいよね」 「・・?うん。そうだけど」 『淳』というのは、三木の『源氏名』本名は『三木吉蔵』という。まるで、じーさんみたいな名だ。 翔平は顔を近づけて来て言った。 「まさか、淳ちゃんとなんかあるんじゃないよね?」 ……え?……なんでそーなる? 「あるわけないよ。なんでさ?」 それを聞いて翔平は安心したように言った。 「よかった。最近、俺、雅ちゃんほったらかしだったから心配したよ。なにしろ雅ちゃんかわいいし」

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