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鷹取晃人01
真夏になると流石に暑くて公園にはいられなかった。
最寄り駅近くのショッピングモールやゲーセンに行ってみたけれど、何も悪いことをしているわけではないのに補導員の目が気になった。実際、髪を染めていかにもやんちゃしてます、といった感じのひとたちが怒鳴りつけられている現場に、修哉とふたり、居合わせてしまって、気まずい思いをしたこともある。
何回かハンバーガーショップに行ったが、修哉はドリンクしか頼まない。お腹すいてないのかと訊くといつも、そんなにすかないという。気にせず食べてと言われたけれど、度重なると流石に申し訳なくなる。次第に修哉と同じSサイズのコーラを頼んで、それを時間をかけてちびちび飲むようになった。奢ると言っても、断られそうな気がした。一度、修哉の持っていなかった漫画を貸してあげると言ったとき……、普段は何でもうんうんと聞いてくれる修哉が、そのときばかりは決して首を縦に振らなかった。「借りても返せそうにないから」「いいよ別に。何だったらあげる」
修哉の顔からはいつもの笑顔が消えていて、そのときになってようやく、言ってはいけないことを言ってしまったのだと悟った。
「いいよ、だって俺は晃人にあげられるものがないから」
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