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鷹取晃人01
あるとき、普段滅多に話しかけてこない義母から、「ちょっと晃人さん」と呼びかけられた。「あなた、学校が終わってから、一体何やってるの」
答えられずにいると、義母は畳みかけた。「駅前のショッピングセンターで制服姿のあなたを見かけた、って、ご近所の奥さまから聞いたのよ。どうしてそんなところにいたの」
「それは……友だちと、会ってて……」
「お友だちなら学校で会えるでしょう」
「……学校では会えない友だちだから」
「公立の子でしょう」
学校名を口にするのも嫌だとばかりに義母は眉をひそめた。
「買い食いなんかして、みっともない。公立の子はあれが普通なのかもしれないけれど……。でも瑛光の制服はあなたが思っている以上に目立つんですからね。あなたが誰とお友だちになろうがかまいませんけど、ご近所で噂になるような真似だけはしないで頂戴」
別に好きでこんな学校に通ってるわけじゃない……
悪く言われるのはもう慣れっこだったけど、修哉のことまでみっともない、と思われるのは心外だった。
「まさかその子はオメガじゃないでしょうね」
何てことを訊くんだと思った。
オメガだったら悪いのか。どうして頭からオメガは劣っているものだと決めつけるのか。逆にアルファは、優れているものだと決めつけるのか。大体、発情期があるというだけで、他は何も変わりないじゃないか。……
晃人がもう少しだけ大人だったら、そうやって言い返すことができただろう。しかしそのときはまだ、義母が怖かった。下手なことを言えば、修哉と二度と会えないようにされてしまうんじゃないか、と。
「オメガじゃないと思う」
「検査はされてるの?」
「それは分からないけど……でもすごい頭、いいから、きっとオメガじゃないと思う。宿題、一緒にやったりしてるんだ。使ってる教科書とか違うから、参考になって……」
「そう、分かりました。公立校の優秀な子に、お勉強を教わっているのね」
「うん」
「アルファのあなたが」
義母は勝ち誇ったように言い捨て、去っていった。
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