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はっぴーでいず 7

「えーとね、椅子が無いからさ俺達が出て行くと、ファンの子が前に押し寄せるわけ。まぁ、柵でブロック分けされてるから、全員が押し寄せてくるわけじゃないけどね。で、それが、結構大変みたいなんだよ。ステージから見てると、あぁ、あの子押されて危ないなとか、あっちで倒れそうだぞって。それに、汗びっしょりになるし、体密着するし。そうだよ、鷹人が女の子にくっ付かれたら嫌だなぁ、でも仕方ないか……。まぁ、後ろの方ならそんなこともないけど――」  瞬がブツブツ言いながらジャケットを羽織り、カバンを持った。 「まぁ、行った感じで考えて」  瞬がそう言いながら慌てて玄関に向かった。 「うん、わかった」  俺は腰に響かない様ゆっくり大股で瞬を追いかけた。 「じゃ、行ってくる。後でな、鷹人」  瞬が俺の両頬にキスをしてくれた。 「行ってらっしゃい、瞬。頑張って」 「おう」  玄関が閉まり、部屋の中に静けさが広がった。  それから俺は、人生初の『座席の無いハコ』で行われる、瞬のライブに備えて体力を回復するべく、もう一度ベッドに入って寝ることにした。  ライブは大体2時間くらいかな、それから、会場に入るまでに……うーん。開演時間ギリギリに着くようにしよう。  そう言えば、進藤に1件急かされていたイラストがあったっけ。でも、今はとてもやる気になれないから、少し寝てからライブに行くまでの間に進めるようにしよう。 あ、後、会場の場所を確認しなくては……。チケットは財布に入れてあったっけ――?  やることを頭の中で整理しているうちに、俺は深い眠りについていた。  次に目を覚ましたのは、時計が昼の12時を回った頃だった。 朝食も食べていなかった俺は、簡単に食事をすませ、ライブ会場の場所を確認してからマンションを出た。  仕事場にしている前のマンションは、今の所から自転車で30分弱。俺はだるい腰を庇いつつ、自転車をこいで仕事場へと向った。途中で、今回はタクシーで行けば良かったと少し後悔していた。    仕事場に着くと、絵を描き始める前にスマホのアラームをセットした。7時開演だから、ここを6時前に出て行けば、あまり待ち時間がなくていいだろう。  それから、進藤に急ぎだと言われていたイラストに取り掛かろうと机に向かい、最近絵を描く時に使っているヘアバンドを探した。  いつも机の上に置いておいたんだけど――。

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