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最終話

◇   「千秋ちゃん、朝ご飯できたよ」 「ん~」 「千秋ちゃん。今日はあさイチから講義あったでしょ? 休むと落第するよ」 「ッは! ヤバイ!」  俺はベッドから全裸で飛び起きる。 「待って、千秋ちゃん。一回だけしよう」 「え!? あっ! 貴春っ、やあっ、ひあぁああっ」  せっかく起きたのに、ベッドに押さえつけられ熱いモノを後ろにあてられる。昨夜、遅くまで散々使われたそこは、簡単に貴春のデカいのを飲み込んだ。 「あっ、あっ! あぁあっあっ、ひっ、ンあっ!」 「凄いね。千秋ちゃんのここ、完全に性器になっちゃったね」 「ンぅうっ、ンっ、はぁっ、あぁあっ! あッ!」 「ちゃんと約束守ってくれてる? 俺以外を咥えてない?」 「ちゃ…と、あッ、まもっ…てる…ぅンっ、」 「じゃあここ、俺の形になってるね」  不思議なことに、カフェテラス前の芝生で醜態を晒したあの日以降。大学内の人間はどうしてか元に戻っていて、音信不通になっていた友人たちも、何事も無かったように話しかけてくる。  兄弟が芝生であんな醜態を晒したというのに、それについては一言も触れてこないのも妙に感じる。が、ほぼ全てが元通りになっていた。  だが、ただ一つ元通りでないのは。 「貴春っ、貴春は…他に男……んっ」 「なにそれ。俺が他に? いるわけないじゃない、千秋ちゃんのお世話で手一杯だよ。ほら、集中して、時間無いから」  あの日、貴春に絡みついていたあの小柄な男。俺に需要が無いと、貴春にも求めて貰えないと喧嘩を売ってきたあの男の姿を、貴春の横で……いや、大学内ですら見かけなくなったのだ。  友人たちに聞いても、みな一様に『そんな奴いたっけ…?』と話を逸らしてしまう。  せっかく当初の予定通り貴春に抱かれたというのに、アイツが居なくなっちまったら一体誰に報告すればいいんだ? 大体、こんなに何度も抱かれるつもりはなかったのに、今ではほぼ毎日、一日2~3回は貴春と…血の繋がった弟とセックスしているのだ。一度きりならともかく、何度も繰り返されるこの関係は…一体何なんだろう。  だがその疑問を、今更貴春には言えない。言ってはいけない、そう感じている。 「あぁッ! んっ、んぅぅ…ッ」 「くッ」  あさイチで、背中の上に弟の精液をかけられる。その後の深いキスを何度か受け入れたら、俺の朝の仕事はひと段落する。 「シャワー浴びたら、ご飯食べてね」 「うん、サンキュー」  もともと貞操観念の低い俺のことなんだ、弟とセックスしていることに罪悪感など一ミリもない。むしろこの体で貴春を繋ぎとめておけるのなら、幾らでも差し出してやる。  あんな酷い一ヶ月をまた経験するくらいなら、俺はこの先も貴春とセックスして、貴春のご機嫌をとって、そうして何不自由なく安定した生活を送る方を選ぶ。  例え、どうして俺があの場所で出禁になってることを貴春が知っているのか…とか、あの小柄な男があの後どうなったのか…とか。気になることがたくさんあったとしても、決して、気にしてはいけない。 「貴春、そろそろ遊ぶ金が無ぇんだけど」 「分かった、用意しておく」  〝今まで通り〟  多分それが、俺にとっても、きっと貴春にとっても。  一番幸せな未来に繋がる道に、違いないのだ。 END

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