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第24話
「征一郎、あれなんだろう」
ご所望のパジャマを買い、他に何か欲しいものはあるかと聞くと、ちびはフロアの中央にあるイベントスペースの賑わいを指差した。
見れば、子供向けのようだが、屋台のようなものがでている。
「何かのイベントの縁日だろ。気になるなら見てくか?」
「……ううん。いいよ。子供ばっかりだし……」
「…そうか?」
この少年は見た目は幼いが、精神的には子供ではない。
余計な世話だったかと歩き出したが、数歩で隣にちびがいないことに気付き振り返った。
ちびはまだ立ち止まって、じっと縁日を見ている。
「(遠慮するとこでもねえだろ……仕方がねえな)」
苦笑して、引き返すと背中を押した。
「見てくぞ」
そこは素直に気になるって言えばいいんだと教えてやると、ちびは驚いた顔になった後、嬉しそうに何度も頷いた。
ヤクザらしい商売をほとんどしていない征一郎ではあるが、実は的屋稼業のシマを持っている。
数年前にたまたま助けた老人がその元締めで、征一郎をすっかり気に入ったその男は、もう引退するからと己のシマを譲ってくれた。
それはあまり裕福ではない船神組の、それなりに堅い収入源となっている。
そんな『本職の』征一郎からすると、本当にままごとのようなイベント屋台ではあるが、沢山の人が集まり、中々に盛況だ。
狭いスペースなので、はしゃぐ子供が走り回り、ちびにぶつかった。
それに怒るでもなく冷静に「走ると危ないよ」と諭しているところを見ると、ちびと子供の違いがよくわかる。
「(普段は子供の相手してるみてえな気でいるが…こうして並べて見ると本当のガキとは違うんだよな…)」
子供でも動物でもない、ということを突き詰めてしまうと、ベッドも風呂も一緒なのはどうなのかというところに行きついてしまう。
ううむと悩んでいると、下から弾んだ声がした。
「征一郎…!」
袖を引くちびの目が、キラキラと輝いている。
何か興味を引くものがあったかと、示す先へと視線を向けると、ビニールプールに張った水の上を球状のものが旋回している。
定番のアレだ。
「……スーパーボール?」
「キラキラしてる…!」
お前の目の方がキラキラしているけどな、と思いながら、好きなだけやれと一万円札を渡した。
「(……やっぱりガキか……)」
ホムンクルスというのは、光るものに反応する習性でもあるのだろうか。
隣でスーパーボールを掬っていた、訳知り顔の子供のレクチャーを真剣に聞いているちびを見ながら、ちょっとだけ安心してしまった征一郎だった。
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