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第34話
■都内某所 征一郎宅 寝室
しんなりとベッドに横たわるちびを、団扇ではたはたと扇いでやる。
「め……迷惑かけてごめんね征一郎…」
「こんなこと別に迷惑なんて思わねーよ。……大丈夫か?」
「うん……」
頭痛や意識の混濁などはないようで、一先ず大事に至らなかったことにほっとした。
芳秀は回復力が高いだとか弾除けだとか言っていが、ちびはごく普通の…見た目通りの耐久度に思える。
無論、それが悪いということではない。
先に言ってもらえればもう少し気を遣ったのにという…まあ、要するに八つ当たりである。
今後はもう少し気を付けて様子を見てやらねば。
「俺も気付かなくて悪かったが、お前もつまんねー遠慮で、無理して付き合うなよ」
アニマルへの洞察力はそれなりにあるが、自分も超能力者ではないので限界がある。
不具合はすぐに伝えてもらった方が、征一郎としても助かるのだと教えれば、ちびはこくんと頷いた。
そもそも昨日の今日だ。本調子に戻ってないのでは…と考えたところで、唐突に全ての線が繋がった。
「もしかして、アレか?さっきからなんとなく元気がなかったのはエネルギー切れのせいか!?」
焦った問いかけを、ちびは肯定しないが否定もしない。
俺はまた……!と征一郎は己の鈍さを呪う。
「は 早く言え早く!具合はどうなんだ今すぐ血とか吐きそうなのか熱は!?脈は!?飲むか!?」
激しく狼狽えてべろんと下半身を露出させると、ちびは少し困ったように微笑んだ。
「ま、まだ大丈夫。もう少し回復したらよろしくお願いします…」
先日の吐血のトラウマから立ち直れていないペットロス恐怖症の征一郎であった。
恐慌が過ぎ、しばしして回復したちびは、「じゃあ、あの……いい……?」と控えめに求めてきた。
当たり前だろ、と頷くと、勇気づけられたように征一郎の下着に手をかける。
ベッドの上で、男の足の間に蹲る少年。
事情を知らぬものに見られたら通報されそうな構図であることは、この際忘れる。
客観よ仕事をするなと己に言い聞かせ、ちびの腹を満たすことに集中した。
「腹はいっぱいになったか?」
二度目の供給は、……結構、頑張った。(何をとは聞くな)
やればできる子……というよりもちびの方が、一度目よりも控えめな動作だったように思える。
頭を撫でてやると、うん、ありがとう、と礼を言ったちびは、赤い顔のまま何故か距離を取るようにもぞもぞと後退した。
「お前…」
汗が引いてから、今度は冷えてはいけないとその辺にあった己のシャツを羽織らせたのだが、そこに隠れた前をかばうような動作に思い当たることがあって、つい無造作に裾を掴み、めくりあげる。
「……わ、」
「勃ってんのか」
ふるりと姿を現したそこは健気に勃ち上がっていて、好奇心に負けて慌てるちびに構わず観察してしまった。
一緒に風呂に入るからもちろん目にしたことはあったが、形状を変えているのを見るのは初めてだ。
征一郎のものとは違うが、それでも子供のものではない。
夜のお楽しみ等の芳秀及び本人の言葉が真実であったことを裏付けるような、淫靡な花芯がそこにはあった。
「ご ごごごめんなさ」
「別に謝ることでもねーだろ。抜いてやるよ」
ちびにとっては食事みたいなものかもしれないが、性的な行為でもあるので、弾みでこうなることもあるだろう。
シャツ持ってろ、と裾を押し付け、誘われるようにそこに手を伸ばした。
「ええええっ!?あのおれ自分で…っあ、待っ…」
指が絡んだその時。
「あ…っ」
ちびがびくっと体を震わせ、手に熱い飛沫がかかる。
出てしまったようだ。
流石にこれは疑似的なものなのではないかと推測されるが、色や匂いは、人のものとそう変わらないように思えた。
「ッ…………っあ………っ」
ちびは胸を喘がせながら、呆然と自分のもので汚した征一郎の手を見ている。
俺より、早くてよかった。
…などとくだらなすぎる安堵を感じていたのも束の間。
「だ……から待ってって…言っ……」
ひくりと唇を震わせたちびの瞳が見る間に潤んでいく。
ふぇ……と泣き出してしまったちびに、征一郎は顔が青くなるほど血の気を下げた。
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