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第78話

 健気に閉じているそこを舌でこじ開ける。  濡らし、ほぐしている途中だというのに逃げるように腰が揺れるので、あんまり動くなと押さえると「わざとじゃ…」という必死な声が聞こえてきた。  やはり嫌なのだろうかと様子を窺うが、勃ち上がった中心からは先走りが滴っている。  抵抗感のようなものがないわけではないのだろうが、気持ちが悪いということではないようだ。  そう判断した征一郎は、もう少し続けることにする。 「あっ、あん、せいいちろ、もう、いいから…っ」 「まだ入らないだろ」  早々に泣きが入るちびに、早すぎると苦笑した。  多少潤ったかと思って差し込んでみたものの、指一本がやっとだ。 「だっ…て、も、きもちい…っ」  焦れったさと遠慮からの言葉かと思ったのに、どうやら快楽が過ぎるという訴えだったらしい。  それほどちびの中では己のみ快楽を得ることが禁忌なのか。 「そのつもりでしてるんだから、気持ちよくなっていいんだぞ」 「いや…、征一郎も一緒…が、い…」  涙目で一生懸命振り返り訴えられると、征一郎もぐっと詰まった。  よりにもよってこんな時に、いつか芳秀にされたちびの耐久性云々の話が脳裏を過る。 「(いや、流石にまだ挿入らねえだろ)」 「せいいちろ……」 「っ……」  切ない声で呼ばれた瞬間、征一郎は「案外平気かもしれない」という悪魔の囁きに負けてしまった。 「あっ」  抱き込むようにして太腿を掴み、軽い体を持ち上げ、もたれかからせるようにソファに腰を下ろす。  ちびは突然のことに驚いた様子で、身じろぎ、振り返った。 「せいいちろ、この、格好」 「風呂の時と同じだろ?」  いつも風呂では、ちびはこうして征一郎に背中を預け、アヒルをぷかぷかさせたりしている。  こんなに足を開かせたりはしないけれども。  下らない冗談でも安心したのか、ちびは「うん」と頷いてから視線を下げた。 「でもココ……違う」  ちびの足の間から生えているように聳え立つものを遠慮がちに握られて、自分の手と違うソフトな刺激にくっと息を詰める。  そこがビクンと反応したのが嬉しかったのか、ちびはそのまま手を上下させた。 「っ……お前の手もいいが……、挿れてもいいか?」  頭頂にキスをしながら聞けば、ちびは「うん……ほしい……」と頷く。  再び太腿を掴み持ち上げると、ちびも握っていた征一郎のものを欲しい場所へと誘導する。 「あ……っ!」  十分にほぐしたとは言えないそこは、意外にも先端を上手く呑み込んだ。  しかし、身体を少し沈ませただけで、早々に行き止まりのように進まなくなってしまった。 「……辛いか?」  当然、試してみて駄目そうならやめるつもりだったが、ちびはふるふると首を振る。 「せ、いちろ…っ、ぜ、ぜんぶ、いいから…っ」  ちびにも少ししか入っていないのが分かるらしい。  力の入り方や声音から、苦痛しか感じていない風には見えないが、やはり苦しそうなのが気にかかる。  ひとまず無理に奥まで突っ込まず、浅い場所を擦ることにした。 「ここ、どうだ?」 「やっ、あ!だめ、そこ」 「お前の気持ちいいとこだろ」 「そ、だけど、でも、これ、だめぇ……!」  先程のように逃げようとしても、征一郎に身体ごと持ち上げられてしまっていては叶わない。  征一郎の方は先端だけ締め付けられて、ちょっと辛いのだが、ちょっと悪くないとも感じて、これも亀頭責めに入るのか、などと結構どうでもいいことを考えてしまう。  高い声が耳に心地よく、ぐりぐりと腫れたようになっている場所をえぐると、びくっと小さな身体が揺れた。  高く飛んだ白濁が、ちびの白い腹を汚す。 「いっぱいでたな」 「あ……おれ……」  息を乱したちびは、出てしまったことを確かめるように己の腹に手を伸ばした。  細い指が腹部に触れた瞬間、内部がひくりと反応する。  征一郎を呑み込んでいる場所が、きゅん、と、欲しがるような動きに変わった。 「や、せいいちろう、」  縋るような切ない声。  どうやらスイッチが入ってしまったようだ。 「欲しくなっちまっていいからな」 「あっ!」  征一郎の方もそろそろ限界だったので、ちょうどいい。  一応加減しながら身体を落とすと、今度はスムーズに飲み込んだ。  昂りの全てを包み、搾り取るような動きにたまらなくなり、征一郎は欲望のままぐっと腰を突き入れる。 「あぁっ!」  びくんと背をのけぞらせたちびの中心からは、また薄い白濁が散った。  征一郎は本能のまま、持ち上げては突き上げながら落とすのを繰り返す。 「んや、あん、あっ、あっ」 「ちび」 「あ、せいいちろっ、あん、あっ、も、一番奥、ほし…!」  太腿を掴む手を縋るようにぎゅっと掴まれ、征一郎は限界を悟った。 「くっ…」  ひときわ強く突きあげると、奥歯をぐっと噛み締め、最奥へと欲望をぶちまける。  それを全て受け止め、もう何度目かの絶頂へと導かれたせいでくったりと力を失った身体を、征一郎は愛しさを込めて抱き締めた。

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