14 / 14

sunrise 7

✴︎ 「.......巡査、●●警察署勤務を命ずる。 以上、初任科長期第152期総員20名。 代表 岡田昴巡査」 「はい!」 とうとう、この日を迎えてしまった。 長期学校生の配属先が一人一人読み上げられて、卒業考査で1番だった学校生が卒業証書を代表で受け取る。 壇上にあがるその足は、機敏で軽やかで。 なんかさ、僕がソワソワして落ち着かない。 昴がとうとう卒業する。 あまりにもシャインに似すぎていて、心が震えたあの日から。 初めて会ったのもこの講堂で、一人前になってこの講堂から巣立って行く。 早いなぁ、10ヶ月。 色々あったし.......な。 もどかしくて、切なくて、それを乗り越えてしまったら、幸せが欲しくてたまらなくって......。 僕はもうこれ以上、心を揺さぶられる経験をすることは、ないかもしれない。 「初任科長期第152期総員20名! 10ヶ月間、お世話になりましたー!! 教官!ありがとうございましたっ!!」 昴の覇気のある号令で、学校生だった彼らの制帽が一斉に宙を舞う。 懐かしいなぁ。 僕たちもやった、コレ。 僕は、昴たちのキラキラした希望やエネルギーも一緒に宙を舞っているみたいで......。 つい、その光景に見とれてしまったんだ。 講堂の外に出ると、卒業した学校生は入り口で写真を撮ったり、同期と笑いあったり。 泣いて仲村にお礼を言う大輝とか。 半田が、稔と弘海と一緒にわちゃわちゃしたりして。 そんな光景を見てると。 入校式のあの日は胸が高鳴っていたのに。 今は.....寂しい.....かな......。 「メグム........菊水教官!!ありがとうございました」 昴の声に、僕は振り返った。 「おめでとう、岡田巡査。 あと....もう僕は君の教官じゃないよ。 昴、今日から君は、学校生じゃない。 ちゃんとした警察官だよ」 「教官はいつまでたっても教官でしょ?」 「......忙しいところだけど、楽しいし。 勉強になるから......昴なら、大丈夫。 頑張って」 「なんだよ、二度と会えないみたいなさぁ.....。 俺、メグムん家の隣に住むんだよ?」 「......知ってるよ.....」 「1番で卒業したし、俺、メグムとの約束守ったからさ。 今度はさ、俺の約束聞いてくれる?」 「.......わかったよ。約束って、何?」 「俺をもっと頼ってくれる?」 「.......お前、僕より年下なのに?」 「関係ないじゃん。約束、守ってよ?」 僕は小さく頷いて、昴の右手を握った。 本当は.....。 引き寄せて抱きしめたかった。 昴の言葉が嬉しくて、今すぐ、その体に飛び込みたかった。 でも......。 「.....昴、警察署の人が待ってるよ」 「うん!じゃ、行ってきます!」 「.....僕も、待ってるから」 「うん、知ってる。またあとで、メグム」 僕の手は名残惜しそうに、昴の手を離す。 まだ、外は寒い。 寒いけど。 ......空が高い。 入校式のあの時の空見たいに、高く澄みきっていて。 今日という日は、もうすぐ終わってしまうけど。 また、日が昇って、明日がくる。 警察の旭日章は、昇る朝日とその陽射しをかたどった紋章で。 前を向いて、職務を執行する僕らの誇りみたいに、常に明日を明るく照らすように......。 未来を駆け抜けるんだ。 ーそう、それは。 sunrise。

ともだちにシェアしよう!