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09
次の瞬間、脳天まで貫かれるほどの衝撃に体は弓なりになったまま硬直した。声を上げることすらできなかった。身も竦むほどの熱量に、骨まで焼き尽くされるようだった。
「ッ!ぅ゛、あッ、あ゛、ぁあ……ッ!」
ぶち撒けられる。腹の奥まで亀頭で抉じ開けられ、文字通り犯される。これまでの行為がどれほど良かったのかと思えるほど、あまりにも独善的で快感とは程遠いものだった。激痛に体は引き攣り、やめろと何度もあいつの体に爪を立てては抵抗した。けれど、あいつはそれを無視して、爪が皮膚を裂こうが構わず俺を犯すのだ。
「ぅ゛ッ、あッ、や、ッ、ぁ゛ッ!ぎひ……ッ!」
地獄のような時間だった。部屋の中に広がる濃厚な血の匂いに、潰れるような肉の音。獣のように犯され、ただの肉塊になる。
どんだけ敵に痛め付けられようが、耐えられた。それはこいつがいたからだ。そんなやつに、傷付けられる。抑え込められ、逃げ場も封じられ、力任せに犯されるのだ。だからこそ余計、痛かった。
「っ、あ゛……ッ、ぐ……ッ!」
腹の奥底、痙攣したそこからたっぷりと注ぎ込まれる精液を受け入れることしかできなかった。
泣くつもりなんてなかったのに、いつの間にかに目からは涙が溢れていた。立ち上がることもできずに動けなくなる俺に、あいつは俺の顔に触れようとして、やめた。そして、中に埋まった性器は萎えることなく再び固くなる。再び浅く動き出すやつに血の気が引いた。
「やっ、めろ……も、……っ」
「じゃあ、出ていくか?」
「っ、……ッ!」
「……お前は出ていけないはずだ。俺がいないと、復讐することも敵わないからな」
その一言に頭に血が昇るのがわかった。
確かにそうだ、俺の目的は村の皆の無念を晴らすこと、復讐を果たすことだ。けれど、それだけではない。
「っ、お、まえは……ッ、馬鹿だ……ッ!俺なんかよりも、ずっと……ッ!」
聡明なこいつならわかってると思っていた。
確かに、俺一人では魔王を倒すことは不可能だろう。俺とこいつの実力差くらい知ってる、ずっと一緒にいたんだから。
けど、俺がそれでもここから出ていかなかったのはそれだけじゃない。
お前が、お前じゃなかったらあんな無茶苦茶な申し出、受けるはずがないだろ。
「……黙れよ」
その言葉は全部、掻き消された。
大きく片腿を掴まれ、上半身にくっつきそうなほど持ち上げられたまま更に深くまで腰を捩じ込まれるのだ。頭の奥、既に壊れていたと思っていた快楽の壺からどろりと蜜が溢れ出し、止まらなくなる。そのまま腰を打ち付けられれば、それだけでトびそうになった。
「ぅ、あ゛……ッ!」
「ッ、黙れよ……黙れ、俺は……ッ」
「ッ、ぁ゛ッ、あ゛ぁ、や、めッ、ん゛、ぉ゛……ご……ッ!」
「……ッ、なんで……っ」
呻くように腹の底から吐き出す勇者の声は呪詛のように頭の中に響く。えら張った亀頭で奥の突き当りをぐちゅぐちゅと叩き潰される。痛みのあまり麻痺し始めていたそこは刺激されるだけで勇者のものを押し出そうと絡みついては余計中のそれが反応するのだ。
勇者自身が混乱してるのだとわかった。こんなに乱れる勇者、今まで見たことなかった。
あの日だって、焼かれた村を見てあいつは取り乱すどころか俺を止めたのだ。
そんなやつが、自分を制御することもできていない。遠くなる意識の中、俺よりも苦しそうな顔をするやつが視界に入った。
なんで、お前が。
なんでお前がそんな顔をするのだ。
もう拳に力は入らない。殴って止めることもできない。それでも俺は、なけなしの力を振り絞ってあいつの腕を振り払おうとするが、とうとう最後まで逃げ出すことは叶わなかった。
どれほどこうしていたのかわからない。
満足したわけではないのだろう、勇者が俺から性器を抜いた瞬間ごぽりと音を立て中に溜まっていた血液混じりの精液が溢れ、床を汚した。俺は、立ち上がることもそれを拭うこともできなかった。
悔しかった。
ずっと、ずっと一緒にいたのに。何一つ俺はこいつのことを理解してやれなかったのかと。それ以上に、こんな真似をするこいつにも腹が立った。
気分は最悪どころではない。涙が乾いた顔は痛かった。どこもかしこもやつの指の痕と歯型が残っていた。あいつは、何も言わずにシャワーを浴びに行くのだ。
やったことは今までと変わらない。
それなのに、こんなに最低な気分になったのは初めてだった。
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