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  「――ッふ、ぅ゛……ッ!」  どろりと煮え滾るマグマが溢れ出すようだった。逃げようとしても四方から拘束された体はまるでびくりともしない。逃げようとする下腹部を掴まれたまま、大きく割り拡げられた排泄器官にねじ込まれる亀頭に声を上げることもできなかった。  快感中枢を弄られたお陰で痛みは緩和されているがそれが余計俺にとっては耐え難いものだった。  やめろ、抜け、ふざけるな。なんて声を上げることも出来ない。少しでも腰を動かされただけで結合部から伝わるその振動に恐ろしいほど熱は増し、全身が跳ねる。奥歯を噛み締め声を抑えることが精一杯な俺を見下ろしたまま勇者は更に腰をゆるゆると動かすのだ。 「っぅ、くぅ……ッ!」  性急な行為に思考する暇すら与えられなかった。  奥深くまで挿入された瞬間頭の中は真っ白になり文字通り思考停止する。仰け反る体を抱き締めるように捕まえられ、突き上げるように更に奥、突き当りである直腸を亀頭でぐりぐりと執拗に押し上げられれば自分のものとは思えないような声が開いた喉から溢れるのだ。 「ひ、ぃ゛ッ」 「やべ、デバフかけ過ぎたか?……まあいいか、大好きな勇者サマとの大好きなセックスはそんなに気持ちいいか?スレイヴちゃん」 「抜、ぅ゛、ッ、あぁッ!や、ひ……ッ!」  負荷に耐えきれずにガクガクと痙攣する下腹部だが、勇者は逃げようとするのを一切許さずガッチリと固定したまま更に何度もピストンを繰り返すのだ。その都度自分の体内からは生々しい音が響き、じんじんと痺れるように疼く最奥を亀頭で突き上げられた瞬間「あぁっ」と自分のものとは思えないような気色の悪い声が出てしまう。 「っは、すげえ声が出たな。……これじゃますます女の子だ」 「……っ、ぁ、やめろッ、ちが、こんな……ッ!ぉ、れ……ッ違う、ちが……ぁっ、あ、や……抜け……ッ!抜ッ、ぎィ……ッ!っぅ、んむ……ッ」  まるでメイジと会話することも許さないとでも言うかのように邪魔するように唇を重ねてくる勇者にぎょっとする。肉厚な舌は閉じることすらできなくなった唇を舐めまわし、そのまま咥内をしゃぶり尽くされる。 「っ、スレイヴ……ッ」 「ふ、ぅ゛……ッ?!ん、ふ……ッぅ゛う……ッ!」 「……ッ、どうして、お前は……」  絞り出すような勇者の声が体の中に響く。それもすぐに掻き消される。腕を動かすことも出来ない、引き離すことも、ただ受け入れることしかできないこの状況で俺に出来ることを探すこともできなかった。  スレイヴ、お前はなんで。恨み辛み呪詛のように口にしながらも、勇者は俺を離そうとしなかった。なけなしの力で顔を動かそうとしても頭を掴まれ深く口づけされるのだ。 「っ、ん、ぅ……ッ!ふ、ぅ……ッ」 「スレイヴ……ッ、スレイヴ……」 「ん、ぅ……ッ!ッぐ、んんぅ……ッ!」  隙間なくみっちりと埋まった性器は少し動かすだけでも内部の粘膜を擦り上げる。昨夜の行為の傷も癒えてないそこにとってはそれだけの刺激も恐ろしいほど強烈だった。  俺の名前を何度も繰り返し、ただ犯される。メイジはそんな俺たちを――俺を見ていた。 『あのとき俺と出ていればこうはならなかっただろうにな、可哀想に』そんなことを言いたげに見ては笑うのだ。今更見られることに恥ずかしい、なんて生温い感情を抱くわけではない。寧ろ、それは殺意に等しい。 「は、ぁ……ッ、く、ぅ……ッ!」  気持ちよくない気持ちよくない吐き気がする虫唾が走る。こんな、見世物みたいな真似。  そう頭の中で繰り返す。そうでもしなければそれこそどうにかなりそうだった。気持ちいいなんて思いたくない。感じたくない。それなのにメイジのせいだ、あのクソ野郎の妙な魔法のせいで何もかもがめちゃくちゃだった。  奥を抉じ開けるように突かれる度に頭の奥でどろどろとしたものが溢れ出すのだ。塗り潰される、呑まれそうになる。それでも自分の手のひらに爪を食い込ませ、握り拳を固めて堪えた。まだ大丈夫だ、そう言い聞かせるように。 「は……本当、強情なやつだな」  メイジが笑う。するりと背後から伸びてきた手に髪を撫でるように掻き上げられ、そして当たり前のように唇を重ねられるのだ。ほんの一瞬、体の中で勇者のものが反応する。  腿を掴んでいた勇者の指先にぐ、と更に力が加わるのだ。 「っ、ん、ぅ……ッ!ふ……ッ!」 「……ッ、ん……」  全身が強張る。体を避けることも逃げることもできず、両頬を掴むように固定され唇を重ねられる。ドクドクと脈打つ鼓動が自分のものか勇者のものなのか最早わからなかった。  真正面、覗き込むようにじっとこちらを見据えるメイジ。ちゅ、と甘く唇を吸われただけで全身の血液が更に熱を増す。  また妙な術を掛けられたのだと理解したときには遅い。汗ばむ全身は外気に晒されただけでびりびりと痺れるようだった。そんな中、やつは俺の首筋に指を這わせるのだ。 「なあ……スレイヴ、いい加減勇者サマに謝ったらどうだ?ごめんなさいって、許してくださいってな。そうしたら許してくれるかもな」 「っ、……だ、れが……ぁ……ひッ!」  するものか、そう言いかけたときだった。  全身の毛穴という毛穴が開き、ぶわりと玉のような汗が滲み出す。焼けるように熱くなる全身、そして、結合部、勇者のものの感覚が更に鋭利に突き刺さるように伝わってくるのだ。 「ふ……ッ、ぁ゛、っ、ぉ、ぐ、ッ!やめ……ッ!ろっ、やめろぉ……ッ!!抜けッ!ぬ、ぅ、ぐ、ッぅ、うぅ〜〜……ッ!!」 「ハハッ!すげえ声!犬みたいだな」 「っ、メイジ……ッ」 「おっと勇者サマ、んなに物騒な顔すんなよ。……全部アンタのためにやってやってんだぜ、こっちは。ほら、もっと良くしてやれよ」 「ここ、モノ寂しくて仕方ねえってよ」そう、背後から伸びてきたメイジの手に腹部を撫でられ、その革越しの指の感触すら今の俺には耐え難いものとして伝わる。円を描くように臍の周り、うっすらと滲む筋を撫でられただけで全身がびくびくと震え、恐ろしいほどの熱が下腹部に集まるのだ。 「嫌だっ、や゛めろッ、や……ッ!ぁ゛ッ、やめろ、ぉ……ッ!やめ……ッ!」 「……ッ」 「ッ、ぎ……ッ!!」  膝裏まで掴まれ、上半身にくっつくほど腰を持ち上げられそのまま奥まで一気に貫かれた。腹に触れるほど反り返った己の性器が揺れる、その先端が自分の意思とは対照的に先走りで濡れているのを見て余計血の気が引いた。逃げようとすれば背後のメイジに体を捕まえられ、身動きすらろくに取ることができなかった。 「抜ッ、ぅ、ッあ、抜けッ!ぬ、ぃ……ッ、ひ、ッ!……っ、ぁ、やぁ、ッ、め、……ろ゛ぉおお……〜〜ッ!」  おかしい、こんなの。  脳天まで貫かれたみたいに頭が真っ白になり、開いた口からは唾液が溢れそれを止めることすらもできない。勇者は舌打ちをし、それでも腰の動きを止めることなく俺を犯し続けるのだ。 「っ、奥ッ!だ、め゛だぁっ、も、やめ……ッ!やめろ、っ、ぉ゛おおッ!」 「お前のせいだ……ッ!お前が悪いんだろ、なんで、なんで俺に言わないで……ッ、俺は、そんなに俺が信用ならなかったのか……ッ!」 「ぃ゛ッ、や、ッぁ、も……ッ!ゆ゛ッ、く……ッ!ぅ、あ゛あぁ……ッ!」  自分の体が自分のものではないようだった。感度を高められた全身は己の血液すらも溶岩のように熱く、体の奥深く閉じたその口を押し広げるようにぐりぐりと亀頭で抉じ開けられるその感触に全身中の体液が溢れ出すような錯覚に囚われる。  どこまでが夢でどこまでが現実すらもわからない。ぐぢゅ、と肉の潰れるような音が腹の奥で響く。勇者のものの形に合わせてこじ開けられたそこは限界まで張り詰めたその雁首で粘膜を擦り上げられるだけでそれを待ち望んでいたかのように俺の意志を無視して吸い付いていくのだ。 「っスレイヴ……ッ、スレイヴ……ッ!」 「ぅ、あッ!や、め、ッ、んんぅっ!ぁ、待っ、だ、めッ、やめ……ッ!っ、ひう!!」 「ッ、く、ぅ……ッ!」  痙攣する腰を掴まれ、根本奥深く口付けたそこにどぷ、と音を立て注ぎ込まれる精液の熱に腰が痙攣する。脳汁が、熱が、溢れ出してとまらない。丸まった爪先、快感を必死に逃そうとするが逃がすどころか体内の熱は吸収するように更に増すのだ。 「ぅ……あ……あぁ……ッ」  みっちりと埋め込まれた性器は一滴も残さず俺の中へと精液を注ぐのだ。長い射精を終え、勇者は深く息を吐く。指先一本すら動かせずに放心する俺の体を抱き起こし、唇を舐める。  そのまま深く舌を絡めてくる勇者に抵抗するほどの力は今の俺になかった。

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