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第5話

 光樹は部屋に入ってきたときのように驚いた顔をして俺を見る。  そしてすぐに、目を伏せた。 「やっぱり、男を好きになるのは、困るよね」 「いや違う、そういうわけじゃない」  慌てて否定する。  口は動く、ホント、そういうわけじゃない。 「どうしようって俺に聞かれてもな。俺も好きです付き合って下さいって、言っていいの?」 「そうか。そうだな、そうするか」  急に湧き上がったデカすぎる感情、どうすりゃいいのかワケわかんなくなってたけど、両想いだから迷わず付き合えばいいんじゃないか。  再度驚く光樹を、座ったままふところに抱き寄せてみる。  なんかもう、ホント好き、それしかない。 「なんなの急に」  自分にツッコミを入れてホント好きを堪能していると、 「春斗さん」  ふところから光樹が声をあげた。  抱き寄せた腕を解くと、光樹は深く息を吐いてから顔をこちらに向ける。  頬が赤らみ瞳が潤んで見えて、かわいい、じゃない、色気がある、ような。 「なんか俺、ちょっとおかしいよな」  光樹に見惚れつつボーッとしたままつぶやくと、光樹は神妙な表情で俺をうかがう。 「うん。急にどうしたの」 「あー、スゲーしっかりしてるのにかわいいヤツが(なつ)いてくるとか、好きってなるの当然じゃない?」 「俺、かわいくないでしょ。顔も性格もかわいくないって、自分では思ってるんだけど」  まぁ、ぱっと見普通の少年で性格もきっちりしてそうだけどな、俺から見たらそうでもない。 「笑った顔かわいいだろ。性格イケメンなのになんとなく甘えたなとこもかわいい」  言うと光樹は俺の背後に回って、背中にもたれて抱きしめてきた。 「甘えていいの?」 「なんだ、甘えちゃまずいって気ぃ張ってんのか? 甘えればいいだろ。いや、甘えて、それ好きだから」  光樹は俺の背中に頬をすり寄せて、笑った。 「嬉しい。ありがとう」  それ以来、光樹は学校で俺を見かけるたびに背後から抱きついてきたり腕に絡みついてくるようになった。  横で見ている遠田が、 「なんだ光樹、積極的だな!」  とか言って笑ってるだけなので、俺もじゃれてくる子犬に構うように光樹の頭を撫でたり肩を抱いたりした。  学校内で同性で両想いになってんのに、それは遠田にも言ってないが、なんか平和だった。  来年生徒会長になるかも知れない奴にこんなことさせていいのかなと、ちょっと気が引けたけど。  部活を引退して大学の推薦入試があったりして光樹と遊ぶ時間はなかったけど、毎日光樹の声劇を聞いて、時々ユニットをした。  BL声劇もやり始めた。  光樹が相手だから、気持ちも込もる。  二人で真剣に劇を作り上げるのが楽しい。  推薦入試が終わると、光樹の時間に俺が合わせられるようになった。  光樹の家に遊びに行くと遠田が邪魔だから、両親がいない時間帯に俺の部屋に光樹を招いた。  ……やっと!  光樹といろいろあれこれできる!  と思ったんだけど。  ベッドに寝転がって光樹を抱きしめて大好きを堪能してたら、そのまま寝ちゃって、そのうち母親が帰ってきてしまった。 「申し訳ない」  せっかく来てもらったのになにもしないで寝てしまった。  ベッドに腰掛けて頭を下げる。  俺も期待してたから、光樹も期待してたんじゃないだろうか。 「疲れてたんでしょ。寝顔かわいかったから満足だよ」  こういう時って年上がリードするもんだよな、不甲斐ない。 「なんかね、情けない気分」  俺はすごいヘコんでるのに、光樹は全然嫌な顔をしない。 「あのね、俺、そういう春斗さんも好きだな」 「えー、なにそれ」 「俺ばっかり甘えて良くしてもらってたら、釣り合わないでしょ。少し情けないところがあるほうが、俺がなにかできる余地がある気がして。俺も春斗さんのためになにかしたい」  甘えの対価を払わないと気が済まないって言ってるような。  好きで甘えてもらってるんだけど。  かわいい顔してるのにやっぱりしっかりしてて、ホント好きだなって思って、初めて光樹にキスをした。  俺はただ触れるだけのキスのつもりだったけど、なにかしたいと言った光樹はさっそく有言実行、首に腕を回すと濃厚に唇を絡めて、舌を侵入させてきた。  舌も絡め合って、絡め合ったまま、抱きしめ合う。  なんで、寝ちゃったかな。  もっとこの先が、したい。

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