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第6話

 冬休みに入ると、光樹に連れられて演劇を観に行った。  小さな劇場での、小さな劇団の劇。  そのとき光樹が声優じゃなくて舞台役者になりたいということを初めて聞いた。  俺は将来なにをしたいかなんて特にない。  一般常識だけ身につけて普通の会社員になるんだろうなと思う。  光樹は学校では部活、自宅で声劇、演劇も頻繁に鑑賞しているらしい。  夢に情熱的なようには見えないのに淡々と真剣に夢に向かう光樹に、惚れ直した。  クリスマスのイルミネーション見に行ったり初詣に一緒に行ったり、年末年始のイベントが終わってから、リベンジで光樹を家に呼んだ。  キスしたり触り合ったり、最初はそれだけで充分だって思ってたけど、やたら光樹が積極的で、結局その日に最後までやった。  スポーツしてないのに光樹は意外とがっちりとした身体つきをしていて、それは光樹の強い心のあらわれのようで綺麗だなって思った。  同性の上擦った喘ぎに欲情した自分に驚いた。  甘えてきても基本しっかりしてる光樹がいざそのときになったらちょっと震えて泣きそうになってて、光樹はホントに大事にしないといけないなって痛感して、一層惚れた。  光樹は正直辛さを耐えるのに精一杯だったらしいが、気持ちは満ち足りてるし俺が良かったならそれでいいと言った。  光樹が好きすぎて困る。  年度末。  俺と遠田は県外の同じ大学に進学して一人暮らしすることになってる。  今までは光樹と時間が合わなくても学校に来てさえいればいくらでも顔くらいは見れたのに、しばらく見られなくなる。  同じ高校だったの、奇跡だな。  光樹と知り合えたのが、この学校に入って一番の戦果だ。  卒業式の前日。  同じ制服を着て同じ空間で過ごせるのも残り一日。  そのわずかを堪能したいと、光樹は初めて俺と会話をした学食で放課後話がしたいと言ってきた。  たぶん前に座ったのはここだろうと入り口から離れたテーブルに着くと光樹は、遠田に自分たちの関係を話してもいいかと聞いてくる。 「兄さんのところに遊びに行くって言って、春斗さんのところに遊びに行きたい」  兄を利用して俺のところに転がり込もうだなんて、なんか嬉しい。 「遠田が焚きつけたんだし、いいんじゃないか話しても」 「兄さんが春斗さんに悪いこと言わないか心配なんだけど」  俺の弟に手を出しやがってとか遠田言うかな、ブラコンだしな。  俺のことを心配してくれる光樹がいじらしい。  そしてふと、思案の表情が大人びて見えることに気づいた。 「光樹、なんか背、伸びてない?」  変わらずかわいいから小さいもんだと思ってたが、座っててもなんとなくわかるほど、成長してる。  光樹は周囲を見渡してから、上目づかいに微笑んだ。 「春斗さんとしてから、急に背、伸びたんだよね。もう伸びないんじゃないかと思ってたから、すごい嬉しかったりする」  俺が光樹の成長スイッチを押して光樹はそれを感謝していると言わんばかり。  今すぐ光樹をがっつり抱きしめて成長スイッチをガンガン押してやりたい気持ちに駆られたが、ここは学校、冷静になって我慢した。 「今のサイズでちょうどいいんだけどな。まぁ身長は欲しいよな」 「うん。役者になるのにさ、演技力あれば身長なんて全然関係ないんだけど、自分が小さいせいか身体を大きく使う役者さんに憧れるんだ」  身長伸ばすのも将来のためなのかよ。  頭下がるし、かわいいし、好きだし。  我慢できずに俺は、光樹の頭をわしゃわしゃっと撫で回した。

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