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第7話
遠田には光樹から話をしてもらった。
引っ越しが済むとアパートに遠田が来て、茶化して悪かったと謝ってくる。
「鷹沢元々女好きだろ? 俺のせいで男好きにしたようなもんで、すごい罪悪感あるんだけど」
「いや、そこ全然気にしてなかったから。俺の光樹になにしてんだって胸ぐら掴 まれるかと思った」
見るからにラグビー部員な身長百九十超えの遠田に本気になられたら怖いなーと思ってたが、大丈夫なようだ。
「光樹はなー、小学校のころから男好きだから、いつか男と付き合うんだろうなーとは思ってたから。いけ好かないヤローが手ぇ出したら掴みかかってたけど、鷹沢なら安心」
「あぁやっぱり掴みかかるんだ」
他の誰にも言ってなかった付き合いを友人にあっさり受け入れられて、俺もなんか安心した。
小学校のころからって、今まで光樹、いろいろ悩んだりとかしてなかったのかな。
光樹のことだからなんでもうまくかわしてそうな気もするが、悩んでても表に出してないっていうのも、ありえるよな。
光樹に告られたとき、『遠くから憧れているだけで充分だった』って言ってた。
今まで誰かを好きになっても遠くから見てるだけだったのかも知れない。
もし弱音があるなら、俺には吐いて欲しいかも。
次の日に遠田と口裏合わせして、光樹が俺のアパートに泊まりに来た。
出迎えた玄関先で、さっそく正面から抱きついてくる。
以前は光樹の頭は俺の胸におさまっていたけど、いつの間にか俺のほほが光樹の額に当たる位置になっている。
「なんかホント、伸びたな」
額にほほをすり寄せながら言うと、光樹は顔を上げた。
「早く背伸びしないでキスできるようになりたいな」
かわいいこと言うから、顔をかたむけて俺からキスをする。
そのままその日は、アパートで好きを堪能した。
下手したら夏休みまで会えないかも知れない。
やることいろいろあったけど、次の日は朝に一度イチャついてから光樹と街でデートした。
カラオケ行ったり美味いもん食べたり、本屋行ったり服買ったり。
遠距離恋愛って気持ちが離れても仕方ないって聞くけど、俺らにも当てはまんのかな。
光樹は高校出たら演劇が盛んな東京の大学に行くって言ってて、さらに遠距離になる。
俺から離れる気は全然ない、光樹も誠実な奴だから俺を捨てたりしないと思う。
でも、なんか、見えない不安がある。
結局、大学入ってから夏季休暇なかばの八月上旬まで、光樹と直接会うことはなかった。
でも電話したりほぼ毎日アップロードされる光樹の声劇を聴いたりしていたから、離れた感はなかった。
光樹は今年も文化祭で女役をするという。
女子の部員も大勢いるが、実力とウケ狙いでヒロインをあてがわれたそうだ。
たぶん来年もヒロインをするんだろう。
お盆には実家に帰ると言ったのに、光樹は部活動が休みになると間もなく俺のアパートに遊びに来ると言い出した。
遠いけど交通費は新幹線使わなきゃそれほど高くはない、会えるならすぐにでも会いたいそうだ。
春休みのときのように遠田と口裏合わせて、光樹がアパートに訪れる。
チャイムが鳴って、玄関を開ける。
「え?」
向けた視線の先に光樹の顔はなく、視線を上げると、背が高く凛々しい男の顔。
「こんばんは」
光樹が来ると知っていたから、こいつが光樹なのだと無理矢理判断した。
けど、さすがにそうすぐには納得できないほど、光樹が劇的に、成長していた。
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