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第13話
相当好きなままで別れるから、今後の障害にならないよう絶対に復縁しないと約束し合った。
予定通り遠田と落ち合い、遠距離は無理だったと別れた報告をする。
遠田は復縁しない約束を反故にしないよう、両方を監視してやると言ってくれた。
うっかり光樹に迷惑かけないで済む、助かる。
地元に向かう電車内、俺は浮かされた熱が下がったように光樹に欲情も困惑もせず、隣に掛けて安堵感を味わっていた。
恋人契約を断ち切っただけで、だいぶ意識が変わってしまった。
光樹にもうすがることはできないが、光樹に負荷をかけるより、それで自分が神経すり減らすより、何倍もマシだろう。
元気なさげだった光樹は、俺がカラ元気で遠田と話しているとしばらくたって会話に混ざり出す。
その横顔は強そうに見えて甘えたがりな高校二年の少年で、光樹はただのかわいい後輩なのだと、自分に強く言い聞かせた。
その後しばらくは恋愛をすることに臆病になった。
カミングアウトしてるから俺が別れたことを聞きつけた男に告られたりしたが、付き合うことがしんどくて全部断った。
三年たって人恋しくなって、男に惚れてネコになった。
毎日のように会えるせいか、恋しさがあまって自分が自分でなくなるような感覚が生じることはなかった。
早めに光樹と別れておいてよかったと思った。
光樹とは合わなかった、俺はタチではなかったんだって。
大学を出て警察官になり、警察学校に通ったのちに地元の交番勤務となった。
東京の大学に行った光樹とはずっと会えていない。
物理的な距離が縮まる気配がない。
なんだかんだで光樹のことを思い出して、そのたびに別れて正解だったのだと自分を納得させる。
光樹は今でもがっつり役者を目指しているそうで、大学四年で実写版BLゲームの登場人物を演じたと遠田に教えられた。
男前な光樹がネコになってるストーリーをいくつかやってみて、俺もこうすればよかったのかなと今さら学習したりした。
いろいろ思い返すが後悔とか全然してなくて。
つらかったり傷つけたり痛々しかったと記憶しているのに、ひたすら愛しかった記憶のほうが強くて、すべてが得難い貴重な青春だったとしか思えない。
光樹と付き合えて、よかった。
了
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