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第一章・8

 天国へイける、とニネットがギルに渡してきたカプセルを前に、ルキアノスは顔をしかめた。 「またあいつは、こんな代物を」 「彼が馬鹿をやる分は仕方がないが、これを調合した人間の存在が問題だ」  確かに、ああ見えてルキアノスは、騒ぎが大きくなるような悪事は滅多に引き起こさない。  立場をわきまえている、というより、面倒な裁判に引っ張り出されるのがうっとうしい、ということが理由だろうが。 「金さえ積まれれば、言いなりに処方する薬剤師か。確かに放ってはおけんな」 「ただ」 「ただ?」 「これが本当に、媚薬かどうかは解からない」  そうだな、とルキアノスは顎に手をやった。  たとえ中身がビタミン剤でも、これは媚薬ですよ、と吹き込めばプラシーボ効果でそれなりに興奮するかもしれない。 「確かめてみないか?」 「どうやって」 「ルキアノス、それを飲んでみろ」 「俺がか?」  大丈夫、とギルは水差しからレモン水をコップに注いだ。 「君に妙な症状が出れば、私が責任を持って介抱してやろう」

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