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キスだけだから…⑷

「ったく、ホント、最悪……!」 「ごめんごめん、そんなに言うなって。お前だって最後、気持ちよさそうに声あげてたじゃんか」 「るっっせえ!」  あのあと、パンツもなにも全部汚れてしまって、部活に戻ることもできず、学園寮の部屋に戻った。寮母さんには不審がられたけど「ショウが突然具合悪くなって、熱も出てきちゃったみたいなので」と大嘘をついた。マコトにおんぶされたために赤くなった俺の頬がその嘘に真実味を持たせていたことは認める。 「ていうかマコト、部活は?」 「平気だ。ショウのとこへ来るとき、早退の手続きをとってきたから」 「いいのか!?そんなことして!」 「もちろん、帰れたら帰るつもりだったけど!……でも、嬉しかったから」  喜んでくれて、嬉しかった。と、少し照れ臭そうに、情けない顔で微笑むマコトに不覚にもキュンとしてしまった。  そうだ、マコトはチケットを見せに来てくれたんだ。あんなにされて一瞬忘れかけていたけど、週末には久々のデートだ。そう思ったら、さっきの乱暴狼藉もちょっとは許してやるかな、なんて。我ながら単純である。  でも、週末にデートってことは、……お泊まりかな。  空はまだ青く、時間的に、寮の中の生徒は皆部活でしばらくは帰ってこない。いるのは寮母さんと清掃のおじさんくらいか。つまりはこの広い建物に、2人きり。  週末デートの時は大抵ホテルにお泊まりで、この好機を逃すまいとばかりに睦み合う。それはもう、気持ち良くて、幸せで。  そんなことが一瞬頭の中に閃いた瞬間、後ろが疼いたのは、男としてどうかと思う。けど、さっき散々広げられたそこが、あの質量を思い出すのを、俺は止められなかった。  そして、もぞ、と僅かにでも腰を揺らした俺に、マコトが気づかないことはなく。 「………ショウ、誘ってるのか」  2段ベッドの下、俺のベッドにしてるとこ。いつも通りに横たわった俺の上に、マコトはゆっくりとのし上がってくる。黒い影が俺を覆って、布団越しに、マコトの体温を感じる。荒くなった息と、鋭い眼光。えっ、おい、嘘だろ、ここでヤるの……!? 「違う!なんでもない!なんでもないって!」 「……確かにいまなら邪魔も入らない」 「入る入る入る絶対入るから!」 「でも今」 「誘ってない誘ってない!見間違いだー!」 「俺がお前のことを見間違えるはずないだろ」 「っっ〜〜〜〜っそ、そんなこと言ったって絆されないからな!」 「なんだ、絆されそうになってくれたのか」 「だあぁぁ!違えよ!」 「じゃあなんだっていうんだ」 「それは、その、なんていうか……言葉の綾だ!」 「もう、うるさいぞショウ」  乱暴な物言いに思わず口を詰むと、その引き結んだ唇に、マコトの唇が重なった。  ゴリっと当たったごりっぱなモノの熱さえ布団越しに感じてしまうのは、きっと俺の気のせいだと思いたい。 「せっかく出来た時間だ。有効に使わなくちゃな」  離れた唇をじゅるりと舐めたマコトの顔が、興奮し切っていて、それに全然抵抗できなくて、ドキドキ高なる心臓が、もう、どうにでもしてくれ、なんて。  今後、マコトの「キスだけ」は絶対信じないことだけ心に決めて、乱暴に布団を剥がす大きな手に身を委ねた。 完

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