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秘書のオシゴト①
西山檸檬 は、メールチェックと予定の変更を終えると、もう一度スケジュールを確認して席を立った。
そして、先輩秘書の黒原俊樹 の優しいダメ出しを受け、訂正してから社長室へと向かった。
今日もまた…緊張の1日が始まる。
仕事はもちろんなのだが…それ以外にも緊張する理由があるのだ。
仕方ない。仕事だ、仕事。
これが俺のメシの元なんだから。
ふうっ…と大きく息を吐いてドアの前に立った。
コンコン
「失礼致します…社長、おはようございます。
本日のスケジュールの確認に参りました。」
「おはよう!…ん?西山君、顔色が優れないようだが…どこか具合でも悪いのか?」
急に至近距離で覗き込まれてドギマギしてしまう。
「えっ!?いえ、大丈夫ですっ。」
答えた途端に、ふわりと抱き込まれて硬直した。
エゴイストの香りが鼻腔を擽る。
いつものハグの後、今日はそっと髪の毛にキス…された気がする。
…そう。顔色の悪い元凶はこの社長なのだ。
頬が熱を持ち赤くなるのが分かる。
ほんの数秒のこのハグが緊張の元なのだ。
何とかそれにも負けず気持ちを奮い立たせると、変更になった時間、面談相手等、確認しながら伝えていく。
「OK!さぁ、今日もよろしく頼むよ!」
「…はい。よろしくお願い致します。」
一礼して部屋を出ると、思わず大きなため息が出た。
「…西山君、今日もか?」
「…黒原さん…明日から代わっていただけませんか?」
「そうしてあげたいのは山々なんだが、交代すると社長の機嫌が悪くなるからね。
この間みたいに業務に支障をきたしそうな元になるのはちょっと。」
黒原さんが戸惑いながらも申し訳なさそうに答えた。
俺もため息をつきながら
「…そうですよね…未遂で良かったけど、あんなことになれば皆さんにご迷惑が掛かってしまいますから…」
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