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取越し苦労(42)

それから暫くして、お義父さんは退院の許可が下りた。 お義母さんの喜び様といったらなかったよ。 「檸檬君、本当に色々とお世話になりました。 あなたがいたから何とか気持ちを立て直しながら過ごすことができたのよ。 本当にありがとう。このお礼は落ち着いたら改めてさせてもらうから。 満もありがとうね。 檸檬君をちゃんと労ってあげて。 2人とも身体には気を付けて、仲良くね。」 お義父さんの隣にぴったりと寄り添い、自分が言いたいことだけ言うと車の後部座席に乗り込み、俺達の返事も聞かずに 「じゃあね!」 と去って行ってしまった。 「何だよ、あれ…檸檬、振り回して悪かったな。」 「いいえ! 満さん、『終わり良ければ』ですよね!? 大事にならずに済んで良かったじゃないですか。 お義母さん、本当に嬉しそうでしたね…」 「親父のニヤけた顔を見たか? 全くあの人達は、幾つになってもバカップルの最先端だからな。」 「仲良しなのはいいことじゃないですか! …俺達もあんな風に…なりたいですね…」 「檸檬が嫌だと言っても俺は幾つになってもベタベタくっ付いてやるからな。 ふふっ。 さぁて、俺達も戻るとするか。 おっ、早速黒原から電話だ。 もしもし?」 俺は電話をしてる満さんの横顔を見ながら 『ベタベタくっ付くのは俺の方だよ』 なんて思っていた。 今日もまた慌ただしい1日が繰り返される。 毎日同じじゃない。 突然思いがけない時に思いがけないことが降ってくるかもしれない。 でも、俺達はずっとお互いを思い合って、愛し合って、時には喧嘩もしたりするけれど、幾つになっても自然に 『愛してる』 を言い合える夫夫でいたいと思うんだ。 「満さん、愛していますよ。」 思わず出た言葉に、電話中の満さんは一瞬大きく目を見開いて、 「アイシテル」 と唇で答えてくれた。 ふふっ、バカップル、万歳だね! (了)

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