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神崎とピアス

「神崎、ちょっとおいでー」 「な、なんだよ、気色わりぃな」 藍堂がこの顔をする時は、絶対に何かを企んでいる時だ。 俺は身の危険を感じて後退る。けど直ぐにフェンスに背中が当たり、フェンスと藍堂に挟まれてしまった。 俺は藍堂を見上げて睨みつけるが、藍堂はニヤニヤと厭らしく笑っている。 「今日は何する気だよ」 「神崎の為に、これ買って来てやったぜ」 「何を…げっ」 藍堂はごそごそとポケットから何かを取り出すと、俺の前に晒した。 それは小さい袋に入ったニードル。それを目にした瞬間藍堂がやろうとしている事を理解した。 「今日はどこに開けよっかなぁ」 「俺の身体で遊ぶなよな」 試しに逃げようと試みたが、あっさりと藍堂に片手で抱え込まれてしまった。 身長180センチの藍堂に対して、165センチしか無い俺は、どうもがいても逃げられない。 「良いから大人しくしてろって、殴られたいのか?あ、殴ったら神崎にはご褒美だったな」 そう言ってケラケラと笑う藍堂。 そんな最低野郎に殺意が湧いたが、否定出来ない自分にも嫌気が差す。 いくら抵抗しても藍堂には何一つ適わないと俺はとっくの昔に理解している。 俺は小さくため息を吐き、抵抗するのを止めた。 「耳はもう開ける所ねぇよな」 「てめぇが開け過ぎなんだよ」 楽しそうに鼻歌を歌いながら俺の耳を弄る藍堂に対して、俺は大人しく藍堂の膝上に座りさっさと終わるのを待つ。 俺の両耳は既に複数のピアスで埋まっている。これも全て藍堂が開けた物だ。 藍堂は人を傷付ける事が大好きで、言いたく無いが俺は痛いのが好き。 そんな俺達だから、こうやって友達をやっていけている。

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