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第38話 チョコチョコチョコ

 ついさっき丁寧に溶かして、冷やし固めたばかりのチョコが、熱くて赤い舌の上で溶けて行く。 「ん、ふァ……」  俺の舌で半分溶けたチョコが、そのまま郁登の舌へとトロトロと流れて消えた。眩暈がするくらいに甘いチョコ。  ソファで向かい合うように座って、大きく開いた脚の間に手をついた姿勢の郁登は、服が乱れているせいもあって、チョコが残っている唇を舌で綺麗に舐めているだけでも、俺の身体を熱くさせてしまう。 「林原先生、チョコ美味い?」 「んっ……」  うっとりとした表情で、俺を追い掛けるように身体を前に倒して、誘っている。 「やらしい人……」  本当に、なんでこんなにそそられてしまうんだろう。肩に触れたら滑り落ちる服、それが腕のところに絡まって止まった姿だけで、腰が熱く重くなる。  ついさっきまで後島に自分達の関係がバレてしまったと、石のように固まっていた人と同じとは思えない。やらしいスイッチが入ってしまった時のこの人の色気って、本当に毒薬みたいだ。 「郁登から欲しがってよ」  喉から手が出るほど、心臓がおかしくなるほどこの人が欲しい。俺の欲望と同じくらい、郁登に欲しがってもらいたい。 「健人……」 「あんたも俺を欲しがって」  言葉に誘われるみたいに郁登が身体の前についていた手を俺へと伸ばす。 「やらしく俺を誘えたら、ご褒美にチョコをあげる」 「健人、知らないの?」  トロンと蕩けた瞳で覗き込みながら、首を傾げた郁登が誘うように唇をゆっくり近付ける。まるで肉食動物が目の前の獲物にそっと、そっと近付ついて食べてしまおうと思っているみたいに、襲い掛かってきた。 「俺、甘いの大好きなんだ」  今日は特別やらしい……ゾクゾクする。  水泳で鍛えた身体は細くてしなやかだ。服を肌に纏っている、そんな感じに乱しながら、ソファの上で向かい合っていた俺へと擦り寄ってくる。その仕草がネコ科の肉食動物みたいだ。 「チョコ、もっと食べさせて?」 「っ」  首筋に噛みつかれて眩暈がした。テーブルに置いてあった出来たてのチョコを自分から口に含んで、そのまま俺の舌も使って溶かして味わっている。 「甘くて、美味い」  チョコが? それとも俺が? そう訊きたくなるくらいに、嬉しそうにやらしく微笑んだ郁登はもっと深く舌を絡ませて、一瞬で溶けてしまえるくらいに、呼吸も身体も熱くさせていった。 「っ、郁登っ」 「……」  部屋の中に甘いチョコの匂いが充満していく。  やらしくて粘液が溶け合う音が俺の下腹部から聞こえてくる。手をついて、下に顔を向けるだけで、よりいっそう強く甘い香りがした。 「んっ、健、人……」  まるで俺の身体で遊ぶみたいに、チョコ混じりのキスとフェラを交互にしている郁登を呼んで、茶色の髪を撫でたら、俺のを咥えたまま、郁登が上目遣いにこっちを見上げた。 「刺激、強すぎ」  潤んだ瞳、やらしく濡れた唇、そしてその唇で大胆に咥え込まれて、濡れまくった自分自身。郁登の半裸姿にもまたすごくそそられた。  目元だけで微笑んで、扱く唇の動きを止めることなく、頭を上下に動かしている。  きつく吸い付かれて、舌で先端の割れ目をグリグリと濡れた口の中で刺激されたら、すぐにもイきそうなほど気持ちがイイ。  眉をひそめた俺を見て、郁登は今度、やらしい音を立てながら、まるで自分の中に突き入れて、イく時の俺を再現しているみたいだった。 「郁登、すご……最高」 「ん、ひゃあァ!」  肌蹴た上半身を撫でて、指を下へと滑らせたら、俺に触って、いじってもらうのを待っていたみたいに、乳首がツンと尖っていた。 「あ、あ、ァ……健人、ダメ」 「すごい、コリコリ」  俺のを咥えて、やらしい気分になった?  そう前屈みになって尋ねたら、返事の代わりにキュッと摘まれた刺激に甘く啼いた。 「あ、待って! 健人、俺、健人のを」  俺を欲しがって――ねだられたから、それを素直に実践してみせてくれた。俺のことがどれだけ欲しいのか、そのやらしい唇と舌で教えてくれた。そしてまだ触られずにいた、やらしい乳首と、ここ―― 「あっ! やァァ……ン」  孔の中、ここにこの後、埋め込まれるもので抉ってもらうのを待って、熱くさせている。 「今度は俺にも食べさせてよ」 「あ、健人……ん、ァ、もっと……」 「知ってるよ」  身体を起こして、俺の首に腕を絡めた郁登の唇はフェラでぷっくりと赤く潤んでいた。指先まで色っぽくて見入ってしまう。さっきまで俺のを唇で咥えて、竿を扱いてくれた指が、ゆっくりとテーブルの上に伸ばされて、もうずいぶん減ってしまったチョコをまたひとつ取った。  郁登が自分でそれを食べずに唇に咥えて、キスと一緒に食べさせてくれる。口移しで食べるチョコは溶けているせいか、何度も味見したものと同じだとは思えないくらいに甘い。でもその中でも、これはダントツに甘く感じた。  喉を伝って、身体の奥に届くような甘さ、コクンって鳴る音の度に、その甘さだけで酔いそうになる。 「あ、ン……」  中を掻き混ぜる指に腰を揺らしながら、舌を絡める郁登から目が離せない。 「熱い……俺が欲しい?」  素直に頷いて、舌を差し込みながら、まるで早くこうしてよって言っているみたいだった。二本に増えた指に自分から腰を振って、奥へ誘っている。舌の間で溶けたチョコはトロトロと俺の顎を伝って、それを跨りながら、指を味わっている郁登が舌で追いかけた。  まるで俺がチョコになった気分だ。  ゾクゾクして、本当におかしくなりそうな甘くて濃い愛撫に、そこが張り詰めて痛い。 「郁登、やらしすぎ」 「ダメ?」  ダメなわけがない。そう答えようと思ったのに、郁登の舌が俺の肌をずっと舐めていて、刺激してくるから、言葉が詰まって答えられなかった。 「っ、はァ」  舌でくすぐって、唇で音を立ててキスを肌に落とされて、たまに歯で齧られると、全部の刺激が下半身に集まって痛みになる。自然と荒くなる息で名前を呼んだら、郁登は俺の硬く熱く育ったそれを我慢できないみたいに掌で包んでくれる。先端を指で撫でられるだけでも、息が詰まって、力がこもる。 「ヤバいでしょ。もう限界……郁登のは?」  そう訊いたら、妖艶に微笑みながら、自分でズボンを全部脱いで、興奮しているって証を見せてくれた。上半身は服を乱して、下半身はやらしく濡らしながら、そして身体の奥で俺の指を咥えている郁登がゾクリとする声で囁いた。 “限界……早く、健人が欲しいよ……”  その囁きに、中を掻き混ぜていた指を抜いたら、チョコよりも甘い声が耳を撫でて、そして甘くて甘くて痺れるくらいの、郁登の体内は蕩けたチョコみたいだった。

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