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第4話

 森本と初めて会ったのは、高校の時だった。森本は文武両道で性格も明るく、周りを温かくする太陽のようだった。気さくな人柄で、入学して瞬く間に人気者となり、いつも沢山の友人に囲まれていた。  一方、倉田は人見知りの上、気難しい性格だったため、人と交わるのが面倒で、いつも気配を消すようにしてやり過ごしていた。それでも、言葉を交わす同級生は何人かいたし、成績もそれなりに良かった。それで事は足りていた。  森本とは同級生だったが3年間同じクラスになることはなく、高校自体が生徒数の多い学校だったのもあり、会話を交わしたことすらなかった。  なのに。どうしてこんなに惹かれたのだろう。  いつの間にか目で追うようになっていた。遠くで見かける度に、あの太陽のような笑顔を見る度に。自分にないものを全て持っているような森本が羨ましくて。  手に入れたいと思うようになった。  けれど、その願望がただの羨ましさからくるものではなく、単にあいつの体に欲情しているからだと気付いた時。自分はその自分の中に芽生えた感情を持て余した。どうしていいかも分からなかった。  そのまま時は過ぎて、森本は大阪の教育大学に進学していった。実は、全くの偶然だったのだが、倉田も教師を目指して同じ大学に希望を出しており合格も収めていた。しかし、これ以上森本と関わることは辛かった。別で合格していた地元の教育大学に進学を決めた。  卒業後は森本を思い出すことも減り、倉田はごく普通の大学生活を送ることができた。人見知りの自分だったが彼女もでき、自分が男に欲情したのは気の迷いだったと思えた。  なのに。 『森本です。宜しくお願いします』  変わらない笑顔で自分の目の前に再び現れた。大阪で高校の教員になったことは風の噂で聞いていたが、まさか転勤して地元に戻ってくるとは思わなかった。それがほんの3ヶ月前のことだった。

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