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第1話 ⑥

 手の大きさからすると男のようだが。  そんなことを思っていると、その手が短パンをスキップして上に上がってきた。Tシャツの裾からその手が侵入してくる。腹筋と脇腹辺りをまたしてもいやらしくさわさわと撫でた。  その触り方に圭介の体が思わずびくりと反応する。すると、その手はそれで燃えたのかなんなのか、今度は少し激しく撫で回してきた。  おいおいおいおい。  声を出したいのだが、出せない。これもいつものことだった。目を開けてもいいのだが、金縛り中に目を開けると大抵どなたかがいらっしゃるし、金縛りにさせてまで圭介に訴えてくる方々は見た目が美しくない場合も多いので滅多なことでは目を開けないようにしているのだが。  ちょっ、なになに??  その手が、腹筋からゆっくりと上に上がってきて、圭介の胸をまさぐり始めた。もう1本(あるらしい)の手もTシャツに滑り込んできて両手で胸の辺りを触り始めた。  仰向けになった圭介の上に誰かが乗っているのが分かる。まさぐりながら、両手の冷たい指先で圭介の両乳首をそっと触ってきた。  くすぐったいようななんとも言えない変な感触がする。男が乳首なんて触られても何にも感じないと思っていたが。その感触は、正直、不快な感じではなかった。  男の幽霊のくせに。こんな平べったい男の胸の乳首を弄り倒して何が楽しいのだろう。そうは思ったが、苦痛を与えられているわけでもなかったので、気の済むまでやらせようと放っておいた。

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