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第1話 ⑤
安い物を求めて何件も店をはしごしたため、全てを揃えてアパートに戻ったのは夕方近くだった。
今夜は簡単にインスタントラーメンで夕飯を済ませる。
テレビまでも前住人が置いていってくれたので、初日から快適に過ごすことができた。まだほとんど私物がない部屋で、風呂に入ってさっぱりした気分でベッドに寝転がってお笑い番組を見る。
家族がいない静かな生活は少し違和感があったし寂しくもあったが、先ほど電話をして声を聞いたせいか、そんな気持ちは薄らいでいった。
昼間歩き回った疲れが出たのか、ベッドに横になっていたら急激に眠気が襲ってきた。もうすぐ意識が飛びそうだな、と思ったその時。
あ。
突然、体が動かなくなった。しかし、圭介には慣れっこな現象なので気持ちは落ち着いている。
金縛り久しぶりだな。
そんな風にぼんやりと考えながら、目を瞑ったまま金縛りが解けるのを待った。しかし、一向に解ける気配がなかった。なんか、いつもより長いな、そう思っていると。
は?
誰かが自分の体に触れる感覚がした。
前にも体に触ってくる奴らはいたが、大抵は首を絞められたり、手首や足首をぐっと掴まれたり、幽霊らしい恐ろしげな触り方をしてきたが。
なんか……。エロくないか?触り方が。
パジャマ代わりに着た短パンから出た太もも辺りをさわさわと撫で回す手を感じた。
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