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最終話 ⑳
え?
自分の体が力なくベッドへと沈み込む。手足に力が入らない。
「圭介?」
樹が焦ったように上から声をかけてきた。視界が暗闇から戻り、目の前の樹をぼうっと見上げる。
「なんか……真っ暗になった。一瞬」
「……大丈夫か?」
「ん」
「……このまま寝ろ」
「え……だって……樹まだイってないじゃん」
「俺はいい。さっき圭介に貰った生気で十分だから」
「でも……」
「いいから」
有無を言わせない勢いで、まだ動けない圭介の後処理をして、下着とスウェットを着させた。
「ほら」
「……ごめん」
「謝んな。お前は何も悪くない」
ゆっくりと意識が遠のいていく。樹の声が聞こえた。
「おやすみ」
おやすみ、と返したかったのに。圭介が口の中で作った言葉は発されることなく、深い深い暗闇の中に落ちていくように圭介の意識は暗転していった。
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