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最終話 ㉑
夢を見た。
気づくと周りを草に囲まれた場所に寝転んでいた。起き上がって見渡してみる。それはどこまでも続く草原だった。目をこらしてみても、先には同じ黄金色に輝く背の高い草がそよぐだけで、他には何も見えない。
ふと、自分の体を見る。少しむくんだような小さく丸い掌。頼りなさげに出た形のよい膝小僧。体から伸びるふくよかで短い手足。
圭介は子供になっていた。何歳ぐらいなんだろう?そう思っていると、なぜか自分が園児服を着ていることに気づいた。幼稚園児が着ている、長袖のスモッグみたいな上着に、同じ色の短パン。でも、不思議なことに足は裸足だった。
『圭介』
誰かが圭介の名前を呼んでいる。呼ばれた方へと顔を向けるがやはり誰もいない。
『いいから、寝ろ』
少し乱暴にその声が圭介に伝える。圭介はその声を知っている。だけど、名前が思い出せない。
誰だっけ。
『そんなのいいから、横になれ』
その、少し苛々した声に押されて大人しく再び草の上に寝転んだ。
『ほら。目ぇ、潰れ』
言われた通りに目を閉じる。しばらくすると、頭に優しく誰かの手が触れた。ゆっくりと圭介の細い髪を梳きながら撫でられる。そのあまりにも心地良い感触に思わず笑顔になる。段々と意識が混濁してきた。
『おやすみ』
あ。そうだ。思い出した。この声は。
樹。
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