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第五章・3
「悦かったよ、白川くん」
「叶さん……」
ウェットティッシュで瑞樹の精を拭いながら、誠は意地悪く訊いてきた。
「白川くんは? どうだった?」
「まだ少し、怖い、です……」
気持ち悦すぎて、怖い。
自分が自分でなくなる感覚が、怖い。
「そのうち、何も考えられなくなる」
「そう、でしょうか」
「そうとも」
そして、誠の笑顔がそこにある。
まだ熟れたままの思考で、瑞樹は薄く微笑み返した。
何だろう、この感じ。
今までの、叶さんへの気持ちが、別の何かに変わったような。
ただそれは、嫌悪とは違う。
そのことに、ほっとした。
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