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第1話
コンコンと
コンコンと
雪が降っていた。
地面を染め上げる白。
それに甘美な響きを感じる事を僕は否定はしない。
全てを白く染め上げて、無に帰してくれる。
僕の事も、そうして消して欲しかった。
特に不満があるわけでは無い。
特に病に侵されてるわけでもない。
特に生活に困ってるわけでもない。
ただ
生きる理由が見つからなかった。
コンコンと雪が降る。
こんな思いごと僕を消して欲しい。
ただ、食べて、寝て、起きて、息をして。
生命活動を維持しているだけだ。
サクサク。
サクサクサク。
雪の中をそんな事を考えながら歩く。
少し吹雪いてきたか、帰ろうか。
そんな事を考えていた時だった。
足元に何かが転がってあることに気がついた。
雪に覆われて、白く染まりつつある。
人。
ああ、羨ましい。
そんな事をまず考えてしまって振り払う。
少ししゃがんで
「もし、もし」
声をかけて頬を少し叩けば、反応が返ってきた。
なんだ生きてるのか。
残念だ。
「………」
僕が彼ならば、きっと事切れていた事だろう。
なんとうらやましいことか。
生きてる物は仕方ない、放っておく訳にもいかず男を抱き上げる。
羨ましい、こんな状況に居て生きているだなんて。
ああ、なんてもったいない。
そんな奴を死なせてなるかい。
そうして僕は男を屋敷へ連れ帰ることにした。
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