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第2話

もぞりと布団が動いた。 暖かいように囲炉裏のそば。 と言っても、僕が襖を全開にして外の雪を見ながら、縁側でキセルを蒸してるのだから意味はないのかも知れないが。 「起きたのかい」 「俺は…」 「雪の中で倒れてたんだよ」 「そうか…」 僕は外を見ている、男の方を向いては居ないので姿はわからない。 そんな事より、白く染め上げられていく庭に興味があった。 「しかしあんたも残念やね」 「…え」 羽織をわざと腰までずらす、雪の冷たさを感じたかった、が 雪の冷たさ故、己の生の暖かさが余計感じられるだけだった。 残念だ。 「死ねんで」 「……助けた奴のセリフじゃないな」 「雪に埋れてる方が幸せな場合もあるて」 はっは、と笑うと背後に気配を感じた。 男が起き出したのだろうか。 「動かない方が良いんじゃないのかい?あんた雪に埋れてたんだ」 「………俺にはそう言って、自分はそんな事をするのか」 男は僕の羽織を治して手を握る。 「中に…」 「なんで?」 「俺が寒い」 「………そうか、普通」 の人は、生きたいのだろう。 「仕方無い」 立ち上がり部屋に戻る。 男は連れてきたおりに布団に転がした。 つまりそのままの姿だ。 明るい場所でよく見ると黒い髪に、少しボロい若草色の着物。 「まぁ、この屋敷にある物は適当に使って構わないよ」 何せ助ける気など無かったのだから世話をする義理はない。 「生きたいなら、勝手におし」 なにも言わない男を放置する。 くらりと僕の頭が揺れた。 自然に訪れる睡魔だろうか。 そのままふらふらと横になる。 嗚呼、此処が外ならば… “白く染まってしまえるのに” そう思いながら。

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