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第4話

コンコンと コンコンと 雪が降っていた。 さくり、さくり。 雪の上を歩く音がする。 それさえ覆い隠すような雪。 雪になりたいと言ったあいつは、消えた。 手折った黄色の花は雪の中でも生きたかったろう賢明さで。 段々と萎れていった。 「雪になりそこねた」 男はひとりごちて、萎れていく黄色い花を見ていた。 自分を助けたあいつは… 名前も知らない 素性もわからない あいつが あいつこそが…そこまで考えて。 「そうか、俺は…」 生きたかったのか。 しかし、その理由がなく埋もれていたのだ。 黄色かった花を見る。 理由ならもう見つけた。 生きてみよう。 空っぽなあいつが。 「ふらりと帰ってくるまで」 淡雪のような出会いその一つ 花が完全に枯れるまでに、消えてしまいそうな男の中にしか無いそれらを コンコンと降る雪は 覆い隠せなかった。

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