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プロローグ

 プロローグ 『や、止め……離せっ!』  頭上で戒められた手首はどんなに身体を捩ってみても、緩んでくれる気配がない。 『お前……なんで、こんなっ』 『なんで? そんなの決まってる。アンタが……嫌いだからだ』 『っ!』  ショックのあまり言葉が喉に張りついた。ここまで嫌われるようなことを、自分は彼にしたのだろうか? (していたのかもしれない)  気づかれないよう振る舞っていても、隠しきれていなかったのだろう。だからこんな方法で、報いを受ける羽目になった。 『抵抗……止めちゃうんだ』  (あざけ)るような含み笑いに心臓がギュッと痛くなる。 『アンタはいつもそうだ。なんでも悟ったような顔して、誰にでも平等で、だから、俺は……』 『くっ……うぅっ!』  薄闇に染まる部屋の中、深く身体を貫かれながら漆黒の髪が揺れているのを、痛みを堪えて見つめていた。それは唯一自分が受け身になってしまった経験で、それ以前にも以降にも、誰かに身体を明け渡そうと思ったことは一度もない。  そして、これから先……二度とそんな出来事はないと思っていた。それなのに――

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