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(俺だけだ)
完璧な兄のこんな痴態を知っているのも、良く出来た彼の上っ面をズタズタに砕けるのも。
そんな薄暗い欲望が……芽を出したのは何時だったか? 実際に行動しては駄目だと頭で分かっていたから、自分をなんとか落ち着かせようと距離を置いてみたりもした。
それでも気持ちは収まらず、日に日に膨れ上がった感情が爆発したのが五年前。自分で自分を止められなかった。
だから、さらに距離を置いてみたけれど、全くの逆効果だった。
「気持ち悦い?」
シーツを掴んで震える歩樹に殊更優しく囁きながら、上衣を捲って朱く色づいた尖りをキュウッと捻り上げる。
「んぁっ……あぅっ」
ブジーの挿さった尿道口から、しどろに漏れる先走りが……喘ぎと共に彼の状態を伝えてきた。
「殺したい……訳じゃない」
独白のような楓の言葉はきっと歩樹には届かない。聞いて欲しいのかそうじゃないのかも自分自身では分からない。
ただ、公園で見た歩樹の姿にどうしようもなく腹が立った。安心しきったように微笑んだその先に……別の男がいたことに。
(分からない)
ずっと、憎しみなのだと思っていた。
義母に行為を強要され、誰かに話せば家を追い出すと脅されて……悩みに悩んで助けを求めた兄の部屋で、男を抱く彼の姿を見た日から。
分からなかった。
嫌なのに、義母とセックス出来る自分が。欲情した兄の姿を、面持ちの似た義母に重ねてしまう自分が。
「ぁっ……ん、うぅっ!」
チュウっと乳首に吸いつきながらペニスを強く扱いてやると、無意識だろう……腰を浮かせ、胸を突き出す態勢になる。
「いやらしいな」
虚ろに宙を見上げる歩樹の目前に手を差し出せば、教え込んだ通りに指を舌でペロリと舐めてきた。
「兄さん、犬みたい」
馬鹿にしたように言ってやるが、反応は全くない。それを望んだ筈なのに……鈍く痛む自分の心に気づいて楓は顔を歪めた。
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