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鬼畜会長と子羊ちゃん 9話
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ちぇっ、
東雲はひとりぼっちの部屋でゴロンとベッドに転がる。
寮に戻れば寂しくないと思ったのに、 なんで寂しいのかなあ?
照哉さん誰と話してたのかな?
照哉さんどこ行ったの?
照哉さん一緒に居てくれると思ってた……。
寂しい理由がなんとなく分かった。
こんなに照哉さんの事ばかり考えてさ、 ずっと一緒に居てくれたから、 今夜も……なんて当然に考えていて、自分は照哉の電話の相手さえも予想出来ないくらいに彼を知らないのを思い知らされた。
うっ…………っく、う~っ…………、涙がジワリと出てくる。
なんでえ?
泣きたくないのに何で涙出るんだろう?
俺、
きっと、 照哉さんが好きなんだ。
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やべえ…
目腫れてるし、
東雲は昼前、目を覚ますと頭痛がして大変だった。
しかも鏡みたら目が腫れてる。
仕方ないからメガネをした。
昼前でも照哉は帰ってないみたいだ。
はあ~ ため息、起きてから何回目かな?
ちょっと小腹空いてる気がしてコンビニ行こうかと寮を出た。
にゃ~ん
足元に猫。
メケメケだ。
すりすり寄ってきて可愛い。
抱っこするとゴロゴロと喉を鳴らす。
可愛い。
カシャ、
シャッター音に驚き顔を上げるとユウヤが居た。
「東雲、激写!」
ニコッと笑うユウヤ。
「何やってんすか?」
「東雲がなーんか可愛くてさ」
ユウヤは東雲の頭を撫でる。
「ちょ、幸太にヤキモチ妬かれますよ」
「妬かれたいから良いんだよ………東雲、お前さ、照哉とやった?」
「なっ、」
一気に顔が熱くなる。
「あ~ヤッたんだ」
ニヤニヤするユウヤ。
「や、まだヤッてない!」
「へえ、まだかあ」
自ら墓穴を掘り、東雲はさらに顔が熱くなる。
「なんで急にそんなっ」
「東雲が可愛くなってるからだよ。恋する乙女っていうか、恋する男子か?」
そう言われた東雲は挙動不審で、正直過ぎる態度にユウヤは笑う。
「照哉、まだ戻ってきてなっ…………でぇぇ、東雲どーした?ちょ、泣くなって」
ユウヤの目の前でポロポロ涙流す東雲が居た。
「ちょ、とりあえず部屋戻ろ?なっ?」
オロオロしながらユウヤは東雲を連れて部屋に戻った。
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今、何時だ?
ダルい身体を起こそうと照哉は会長の腕を自分からどかす。
腕枕とかキモイぜ変態!
心で罵倒し、会長を起こさないようにベッドから降りる。
あ~もう、俺の服またねーし!
照哉は舌打ちする。
会長は毎回照哉の服を捨て自分が買った下着や服を着せたがる。
昨日着ていた服は自分で買ったモノで、結構気に入っていたのだ。
ぜってえ!殺す!
照哉は素っ裸で寝室を出てシャワーを浴びに行く。
身体に付けられたキスマークも嫌がらせだと言われた。
東雲の前で裸になれないように。
シャワーを浴びながら、キスマークも抱かれた感触も洗い流したかった。
「あの~」
ドアの向こうから声がして照哉はビクッとなる。
でも、聞いた事がある声。
確か……あかり?だっけ?
「なに?」
「薫ちゃんに君の着替え頼まれたんだ。ここ置いておくね。それと朝ご飯作るから食べてね」
会長とは違い優しく和らいだ声。
「ありがとう」
素直に返事を返したくなる声だった。
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シャワーから出ると新しい服と下着。
着たくないけど、真っ裸じゃマズいしな。
仕方なく服を着た。
キッチン近くまで行くと甘い臭いがし、そこに居る灯は照哉の方を振り向く。
変態鬼畜と正反対の優しそうな雰囲気。
ニコッと笑って、
「わあ、めっちゃかっこいいんだね」
と言った。
「座って」
灯に促され、椅子に座る。
料理が目の前に出され、照哉は、
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
灯の目の前に居る素直そうな男は本当にかっこいいと思った。
薫ちゃんの恋人だよね?今までの恋人とは何か違う。
まともって言うか…………………。
綺麗なのは薫ちゃん好みだよなあ。
「ね?そんなガン見されたら食べにくいんだけど?」
「えっ?あっ、ごめん」
灯は見とれてた事にようやく気付き慌てて謝る。
「なに?珍しい?男と寝る俺が」
照哉は無表情で料理をパクパク食べながら灯に聞く。
「なんか今までの薫ちゃんが連れてた人達と違うなあって」
「そんなに薫ちゃん色んな奴をこのマンション連れて込んでんだ?」
照哉はその中の1人なんだろうと自分でも知っている。
「このマンションはね、君とその前のホストみたいな子しか連れて来てないよ。」
「ユウヤ?」
「そう、そんな名前。このマンションは薫ちゃんのプライベートマンションなんだよ。他に別荘とかマンションとか幾つも持ってるからさ、そこには連れ込んでもここは他人は入れなかったんだ」
へえ~と思った。
「このマンション連れ込んだのあと1人居るよ、東雲」
「東雲?」
灯はどこかで聞いたような事があるような?と考えて込む。
「東雲知ってんだ?」
「あ、いや、顔見たら分かるかも………でも、君ってさ」
「照哉」
「えっ?」
「君じゃない。照哉」
照哉はそう言ってスープのおかわりを要求する。
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「落ち着いた?」
ベッドに座り俯く東雲にユウヤは声を掛ける。
ベッドの真ん中ではメケメケがくつろぐ。
「ほら、ホットミルク」
ユウヤは東雲の手にマグカップを持たせた。
「東雲、お前照哉が好きなんだろ?」
ユウヤの言葉に東雲は小さく頷く。
「俺…………照哉さんの事全然知らないし、昨日の電話の相手も予想できないし、照哉さんの恋人だったらどうしようとか思っ…………」
東雲は言葉をつまらせ、またポロポロと涙を零した。
「あー、だから泣くなって!な?ほら、いい子だから」
ユウヤは隣に座り、頭を撫でたり、優しい言葉をかけたりと忙しないが、小さい子供みたいな東雲が可愛くてマグカップを取り上げ、床へ置くと彼をぎゅっと抱きしめた。
ユウヤの腕の中泣きじゃくる東雲。
あーもう!この可愛さ反則!
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