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 RRRRRR…  RRRRRR…  一向に相手方の出る気配はない。 「……………?  なんで出ないんだ…?」  携帯電話を閉じ、水上荊櫻は首を傾げた。  息子である瑠維のシフトを一応把握している荊櫻は、打ち合わせ中の男…小鳥遊玲に視線を向ける。  救急外来に移ってから夜勤の割合が増えているし、そのまま日勤に入る事もある。  確かにそれは他の医師も同じだが、「水上の人間としてそれはどうよ」と思う。  激務で頭がいっぱいだから気付いていないのだろう。  伴侶と心ゆくまで肌を重ねていられない玲からは、明らかに焦燥が見て取れるのだ。 『ケダモノの癖に、鈍過ぎるだろが…っ』  軽く舌打ちをして、荊櫻は携帯の操作を続ける。 『………ま、瑠維の方を優先するがな…』  久々の鬼女降臨といったところであろうか。  メールを素早く打ち込み、策を練る荊櫻なのだった。

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