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闇の中で蕾が開き、大輪の花になる。
甘い香りが立ち上り、鼻を擽る。
嗅ぎ慣れた愛おしい伴侶の肌の香りそのものの…。
『瑠維………ッ』
その名を口にしただけで、沢山のビジョンがフラッシュバックし始めた。
穏やかに笑う瑠維。
旨いメシが出来たと、照れ臭そうに笑った瑠維。
綺麗にアイロンをかけたぜと、笑いかける瑠維。
軽く唇を啄んだだけで、切ない吐息を零した瑠維。
腕の中で、切なげに身をよじった瑠維。
重ねた肌の熱さに震えた瑠維。
中に蜜を注がれる程、潤み蕩けた瞳を向けてくれた瑠維。
なぜ。
何故こんなにも離れていられたのか…。
我慢なんかできる筈などなかったのに。
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