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「はー…………、まだ腹と頬っぺたが痛えよ。
ふふ…っ」
まだ余韻が残っているようで、瑠維はクスクス笑う。
「ひっでえな…、仕方ねえだろ?
おまえにがっついたら、目茶苦茶空腹になったっつーのに」
「全くだ。
腹の虫が鳴る度に大笑いするし、俺達の事を捨て犬扱いするし…」
「だから、ごめんって言ったじゃん。
だってさ、きっとケモ耳と尻尾がついてたら、耳を垂れさせて尻尾も…。
ダメだ…、一回ツボったらはまる…。
くくっ、くくく…っ」
スツールに腰掛けて鍋を掻き回しながら、瑠維は笑いを堪え切れない。
「「………………」」
絶句している二人が、どうにも大型犬に見えて仕方ない。
玲はヤンチャなゴールデンレトリバーで、忍はカチコチのドーベルマンかシェパードだ。
それがガックリと肩を落としてシュンとなる様子を想像してはいけないのに、ついつい想像してしまう。
腰が怠くて踏ん張りが利かないのに、笑ってしまった瑠維を見て、二人は考える。
『俺達が大型犬なら、瑠維は中型犬かよ…?
いや、小型犬だろ』
『ポメラニアンか、ロングコートチワワ…、いや………、豆柴か………』
…と思っているとは言えず、沈黙したのだった。
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