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「僕もお母さんも、皆が幸せなら嬉しいんだ。  だから、なんにも考えないで受け取ってね。  あ、移動は反重力チップを使ったから、家の中は触ってないよ。  それと、配管も配電も完了してるし、暮らしてくのも全然支障ないから安心してね。  じゃ、帰ろっか」  璃音が振り返った先には、優しい眼差しをした龍嗣が立っていた。 「旅行で疲れてるだろうから、あと二、三日は休むといい。  新婚家庭の邪魔をする程、私は野暮じゃないからね」 「そういう事だ。  玲、お前も同じ日数休めよ」 「じゃあね」  龍嗣、璃音と、母が車に乗り込み帰途についた。  暫く見送り、微妙に腑に落ちない部分を抱えつつも、三人は顔を見合わせる。 「とりあえず…さ、璃音の好意に甘える事にしようか?」 「そうだな…。  戻しでもしたら、何度でも同じ事になりそうだしな。」 「やはり、あの親子に逆らうのはやめよう」  苦笑いを浮かべて瑠維を間に挟み、三人肩を並べて門扉を開ける。  璃音が言ったとおり、家の中は何一つ壊れず、皿やコップに至るまで1ミリもズレていなかった。

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