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君の園 待つ 1

  「君の園 待つ」  一辺が一㎝、もしかしたらそれにも満たないかもしれない。  そんな小さな布片を見つめる横顔は、いつもどこか険しくて… 「あー…目がショボショボする」  そう言うも、手を止める気配はない。  胡座をかいて座った目の前にのりを塗った台、その上にピンセットと指先とでこねくった物を並べていく。  こねくった…なんて言うと、また嫌そうな顔をされるのだけれど、オレにはそう表現するしかなかった。 「幸成さん」  生まれてこのかた、芸術なんて物に縁のなかったオレには、幸成さんの折り分けている…と言う言葉にもピンとこないくらいだ。 「あ、あぁ…時間かな?」  幸成さんはそう、指先から視線を外さずに、工房入り口に立つオレに聞いた。  彼が作業中視線を外さないのはいつものことで… 「そ、か…気を付けて」  手を休めた後に視線がさ迷うのもいつものことだった。  それにも大分慣れた。 「幸成さん」 「ん…」  幸成さんは…酷く人見知りだ。  オレにも、視線はなかなか合わせてくれない。  だからいつも、工房に入って幸成さんの隣に座る。

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