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「―――――オレ、お前の子供、産むのか…?」  触手の吐き出した粘液は、あれだけべたべたとしていたはずなのに乾いてしまえば何事もなかったかのようにサラサラだ。  ぼんやりと座り込んでそれを眺めるオレに、相加は面白そうに笑みを送ってきた。 「君、胃で妊娠するの?」 「はぁ!?」 「俺の卵は今頃君の胃の中で溶けてるだろうさ」  事もなげに言ってくれたが、無理矢理に精液を飲み込まされたオレはその事実を再確認させられて吐き気が込み上げそうだった。 「なんで…」 「君が望まなかったからさ」  「?」を浮かべて相加を見ると、やれやれと疲れたまなざしだ。 「君が俺の子を産みたいと言うまで、待って上げようと言う優しさだよ」 「やさ…優しさ!?」  ふざけんな!と飛び掛かろうとするもできずに廊下にべしゃりと倒れ込む。 「あそこまでされて堕ちない人間って初めて見たよ。とても興味深い。だから――…」  相加が腕を持ち上げると、その手首から生えている触手はするりとオレの顎を掴んで上を向かせてくる。  抵抗を試みるもその細い触手は思いの他力強くて… 「…いつか君に、俺の子供を産みたいと言わせてみせることにしたよ」  にっこりと綺麗な顔で笑った相加がいる日常は、もうしばらく続きそうだ。 END.

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